蹴りの正確さと強力さは、毒ヘビを仕留める上で欠かせない武器だ。ほんの少しでも誤ったら最後、ヘビクイワシにとっては命取りとなる可能性がある。
おもしろいことに、ヘビクイワシはあまりにも高速で蹴りを繰り出すため、自分の筋肉の動きに関する情報が、神経を通じて脳に伝達されず、蹴っているさなかに動きを調整することができない。要するに、ヘビクイワシが獲物に致命的な打撃を与える際には、視覚によって標的を定めることと、あらかじめ組み込まれた運動パターンに大きく依存していることを示唆している。こうした習性を理解することが、ロボット工学や義肢学などの分野にさらなる進歩をもたらすのではないか、と科学者たちは考えている。
ヘビクイワシの最も特異な進化的適応は、その脚だ。長く、力強く、硬い脚鱗で覆われており、ヘビに噛まれてもケガをしにくい。爪はタカほど湾曲しておらず、鋭さにも欠けるが、獲物をつかむには十分だ。
ヘビクイワシは、近縁種の猛禽類とは異なり、狩りをするときに空を飛ぶことはめったにない。樹上で休んだり、餌場から餌場へと移動したり、危険を回避したりする場合には空を飛ぶが、狩りはほとんど地上で行う。
ヘビクイワシが世界で最も目を引く猛禽類の一つとされるのは、脚が長く、顔が鮮やかなオレンジ色をしているからだ。英語では一般的に「secretary bird(書記官の鳥)」と呼ばれるが、それには由来が2つある。1つ目は、かつて欧州からアフリカにやって来た人たちが、ヘビクイワシの後頭部から長く突き出た黒い羽を見て、書記官が耳の後ろに挟んだ羽ペンにたとえたこと。もう一つは、「hunter bird(狩りをする鳥)」または「falcon of the hunt(狩りをするタカ)」を意味するアラビア語「saqr at-tair」の発音が「secretary」に似ていることだ。
集団で行動することがあるトビなどの猛禽類とは異なり、ヘビクイワシは単独か、つがいで行動することが多い。日中は狩りをし、夜間は樹上のねぐらに帰る。鳴き声は、タカというよりコウノトリに近く、そのほえるようなしゃがれ声は、アフリカの草原に響き渡る。
アフリカの多くの文化にとって、ヘビクイワシは「守護」や「警戒」の象徴だ。ヘビをたくみに狩ることが知られており、民間伝承によく登場するほか、紀元前3200年頃の古代エジプトの工芸品にも描かれている。
現代では、スーダンと南アフリカ共和国の国章の中心でも、ヘビクイワシの姿がはっきりと見て取れる。歴史を振り返ると、農民がヘビクイワシの力を借りて害虫を駆除していたこともあった。
ヘビクイワシも、多くの猛禽類と同様、保護という観点では数々の課題を抱えている。農地利用や開発による影響で生息域が狭まり、近年では個体数が減少中だ。ヘビクイワシは現在、国際自然保護連合(IUCN)レッドリストの絶滅危惧種に指定されている。


