宇宙

2025.08.15 10:30

米「月面原子炉」建設計画、NASAはすでに準備を進行中

NASAの月面原子炉計画の構想を描いた想像図(NASA)


2022年の設計開発契約のためにコルビシエロのチームが選定した共同企業体は次の3つだ。1つ目は米航空大手ロッキード・マーチンで、BWXテクノロジーズ(BWXT)とCreareと提携する。ロッキードとBWXTのチームはすでに、原子炉を動力源とするNASAの5億ドル(約740億円)の実証宇宙船DRACO(Demonstration Rocket for Agile Cislunar Operations)開発プロジェクトに取り組んでいる。2つ目は実績豊かな原子炉開発企業の米ウェスチングハウス(WE)で、エアロジェット・ロケットダインと提携する。WEは既存の同社製マイクロ炉eVinciを改造する計画だ。3つ目は小型モジュール炉を開発するスタートアップのXエナジー(X-Energy)で、Maxarと米ボーイングと提携する。Xエナジーは現在、アマゾンと米化学大手ダウ・ケミカルのマイクロ原子炉開発プロジェクトに取り組んでいるが、NASAの指示書で求められている規格化されたHALEU(高純度低濃縮ウラン)燃料ではなく、自社独自の規格外の燃料源を用いようとしている。

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コルビシエロはそつがなく、どの企業体のアプローチを選ぶかについての憶測を述べようとはしない。最終的なシステムは、核分裂の熱エネルギーを電気に変換するスターリングエンジンを採用し、メルトダウンを防ぐ液体ナトリウム循環ループを搭載する可能性が高い。月面に原子炉を5年以内に設置することが可能だろうか。「はい、実行可能だと私は考えている」と、コルビシエロは答えている。だがそれは、NASA有人月面探査「アルテミス」計画の飛行システムの残りの部分の開発続行(初の有人飛行アルテミス2計画は2026年初めに実施予定)と、NASAがその資金を調達できるかどうかにかかっている。

地球では、マイクロ原子炉の建設費用は数十億ドル(数千億円)に及ぶ。NASA暫定長官のダフィーによると、トランプ政権はできるだけ早く月面に原子炉を設置しないわけにはいかないのだ。中国は月面探査機「嫦娥(じょうが)8号」を2029年に打ち上げる予定だ。その目的は、2030年代中頃までにロボットと3Dプリンターを用いて月面基地を建設する方法をテストするためだ。ダフィーによると中国も米国も、月の極域付近にある太陽光が常に降り注ぐ領域の最も優良な月の土地を独占したいと考えている。「そこには氷があり、太陽光が降り注いでいる。米国はそこに最初に到達し、自国の領有権を主張したいと考えている」と、ダフィーは述べている。

forbes.com 原文

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翻訳=河原稔

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