米シンクタンクの高等国防研究センター(C4ADS)が2025年5月に発表した報告書で、ロシアはイランに対して、大規模なドローン産業構築への対価を金の延べ棒で支払っていたことが明らかになった。報告書は、アラブガ特別経済区と、テヘランに本社を置く企業サハラ・サンダーの契約の一環で、少なくとも1億400万ドル(約153億円)相当の金の延べ棒が引き渡されたことを突き止めている。興味深いことに、CNNの記事によればサハラ・サンダー社は支払いが行われていないと不満を述べているという。
イランがこの軍事支援と引き換えに求めたものが、金や銀行送金での支払いだけだったのかどうかも不明である。
イラン設計のドローンが毎晩、数百機単位でウクライナの都市に降り注ぐ一方で、イランが6月、イスラエルによる容赦ない空爆に直面した時、領空防衛のために使えるロシア供与のSu-35は手元に1機もなかった。それも踏まえれば、イランがロシアとの取り決めによる見返りの少なさに不満を抱いているらしいのも無理もない。
そもそもイランはロシアから見返りを得ているのか、得ているとすればそれは何なのかという疑問があらためて浮かぶ。
一部のアナリストは、ロシアが改良型シャヘドをイランに「逆輸出」するのではないかと推測している。とはいえ、いまのところロシア政府にそうした計画があることを示す兆候はない。ロシアが北朝鮮に対して、戦争努力への広範な支援の見返りにシャヘドの現地生産能力を提供している兆候ならある。ロシアはまた、北朝鮮にパーンツィリ-S1中距離防空システムを引き渡したほか、北朝鮮の旧式の空軍に第4世代戦闘機のMiG-29やSu-27を近く供与する可能性もある。
CNNの報道では、ロシアのIl-76輸送機が7月11日にイランに飛来したことを取り上げ、ロシアの最新鋭防空システムであるS-400のコンポーネントが積まれていた可能性に軽く触れているが、現時点で事実とは確認されていない。ちなみに、ちょうど1年ほど前にも、ロシアが未特定の防空装備をイランに引き渡し始めたという報道があった。もっとも、その装備が何だったにせよ、それはイスラエルによる2024年10月26日のイランのS-300防空システムに対する攻撃を防ぐこともなければ、同じくイスラエルによる今年6月の前例のない空爆作戦を妨げることもなかった。
依然として不明な点が多いものの、イランがロシアとの軍事・技術協力で割に合わないと感じている可能性は十分に考えられる。


