人工知能(AI)のせいで自分の仕事が危ういと思う人は少なくない。AIがあらゆる業界を席巻するなか、専門家でさえ「AIセーフな仕事」(AIの影響が小さい仕事)の定義を見直している。マイクロソフト リサーチ(Microsoft Research。MSR)の最新調査は現実を突きつけ、いくつかの驚きも示す。医療からクリエイティブ分野まで、同社の新しいレポートは、どの仕事が最も保護され、どの仕事が最もリスクにさらされるのか、そしてその答えが必ずしも予想どおりではない理由を明らかにしている。
「AIセーフな仕事」とは何か
「AIセーフな仕事」とは、生成AIによって置き換えられたり、根本的に変容させられたりする可能性が最も低い職種を指す。こうした職務は、現場での身体的なありかたや手先の技能、対人コミュニケーション、または現行のAIツールでは効果的に再現できない専門スキルを要することが多い。
マイクロソフト リサーチはAIの影響をどう測ったか
マイクロソフト リサーチは職業ごとに「AI適用可能性スコア」を導入し、同社のAIアシスタントであるMicrosoft Copilot (マイクロソフト コパイロット)と米国労働者との会話10万件を、タスク達成度や自動化の範囲に関する指標と照合して算出した。このスコアは、理論上のタスク分析ではなく、実際の利用状況を反映している。またこの最新調査では、AI適用性スコアについて、AIが特定の職業の作業活動にどの程度(頻度)使用され、その使用が成功し(完了率)、作業活動の広範な部分をカバーしているか(影響範囲)を総合的に示す指標としている。
本研究が過去の研究と異なる点
同社の手法は、OpenAIの研究である「GPTs are GPTs」のようなアプローチとは異なる。専門家の予測に頼るのではなく、職場におけるAIの実利用を追跡しているのだ。OpenAIは「米国の労働者の80%が、少なくとも10%のタスクで影響を受ける」と推計したが、マイクロソフトのデータは、人々がAIを実際にどう使っているかに基づき、明確な勝者と敗者を浮き彫りにしている。
AIによる影響が最も大きい上位10職種
ということで、現在生成AIの影響が最も大きい職種の上位10は以下のとおりだ。
生成AIの影響が最も大きい職種(上位10職種。AI適用性スコアが高い順)
・通訳者・翻訳者
・歴史家
・旅客係
・サービス営業担当者
・作家・著者
・カスタマーサービス担当者
・CNCツールプログラマー
・電話交換手
・ チケット販売係・旅行事務員
・放送アナウンサー・ラジオDJ
AIによる大きな影響に直面している全40職種は後述する。
なぜこれらの職種がAIに脆弱なのか
影響を受けやすい職種は以下のような性質を共有している
・情報処理やコミュニケーションへの依存度が高い
・データ分析、コンテンツ作成、質問への回答といったタスクを含む
・物理的な現場を要さないデジタル完結型の業務である
・多くの機能がリモートで遂行可能である



