Jetson Orinを搭載するもうひとつのロシア製ドローンは、MS001より小型の「V2U」である。ウクライナの軍事ニュースサイト「ディフェンス・エクスプレス」の報道によれば、V2Uは米国の「スイッチブレード300」と似たようなレイアウトの4翼ドローンで、最大3.5kgの弾頭を搭載できる。航続距離は40km以上あるようだ。V2Uは高解像度カメラとレーザー測距儀を備えており、トマホーク巡航ミサイルのTERCOMシステムのように、地形をデジタル地図と照合しながら航行できる。また、MS001と同様に、ウクライナの携帯電話ネットワークを介して操縦士と通信するためのデジタルモデムも搭載している。
V2UもJetson Orinのおかげで、道路などの上空を徘徊して目標を探すことができる。
ウクライナ側のある報告によれば「軍事装備と民間のバスを区別しない」という。
Russia has begun using new kamikaze drones that select targets and carry out strikes without operator involvement.
These drones can fly up to 100 km from the front line, are equipped with cameras and computer vision, operate without GPS, and independently decide when and where… pic.twitter.com/Utym55Dzre— WarTranslated (@wartranslated) May 21, 2025advertisement
電子工学に通じたウクライナのアナリスト、セルヒー・フレシュ(フラッシュ)の投稿によると、V2Uはチームで行動し、各機は翼にそれぞれ異なる色のマーキングが施されている。この彩色はおそらく、互いを識別し、無線通信なしで衝突を起こさず順繰りに攻撃できるようにする工夫だろう。
フレシュによれば、これらのドローンはハゲワシの群れのように上空で重なり合って旋回し、その後急降下してくるという。たとえば「青」のドローンは「赤」のドローンが攻撃を終えるまで上空で待機し、それから攻撃するといった運用になっていると考えられる。こうした行動はスウォーム(群れ)戦術の初歩的なものだが、それでも重要な進歩である。
ただし、目標識別に関するV2Uの知能は現状ではそれほど高くないらしく、フレシュは軍用品でなく公衆トイレを攻撃した例もあったと言及している。
エヌビディアの半導体を搭載しているとみられる3種類目のロシア製新型ドローンは「チュビク(ハイタカ)」で、シャヘドを小型化したような外見をしている。量産段階に入っていると伝えられ、航続距離30km、弾頭重量2kg程度とされる。移動中の車両を発見して攻撃する能力をもち、装甲車両を想定目標とする。実機が回収・解析された例はないが、V2Uと同様に指定位置まで飛行し、マシンビジョン(機械視覚)で目標を見つけるのだろう。製造元のストラティムによると、チュビクは低価格の市販部品で構成されている。ロシアは適したAIハードウェアを製造していないので、市販のJetson Orinを使っていると推測される。


