ロシアの「デジタル・プレデター」
ロシアのランセット攻撃ドローン(重量約15kg、航続距離約40km、戦車を破壊可能な弾頭を搭載)の「頭脳」として、エヌビディアのJetson TX2が搭載されていることが判明したのは2023年のことだった。使用されているエヌビディアの半導体は密輸業者が別の製品と偽装し、第三国経由で少量ずつロシアに送り届けていると報じられている。
Jetsonによってランセットは「ターゲット・ロックオン」機能が可能になっている。これは操縦士が視野内の目標を指定すると、ランセットがその目標を追尾し始め、通信が途絶えてもそのまま目標に向かっていくというものだ。
2024年には、この自動化システムの性能は芳しくなかったらしく、地上の目標でなく隣の影を攻撃したこともあった。ターゲット・ロックオン機能は一時的に無効化されていたようだ。だがその後、おそらくソフトウェアの更新を機に復活し、性能も大幅に改善したとみられる。ロシアの武器性能追跡サイト「LostArmour」のデータによると、ランセットの命中のうち自動誘導によるものが占める割合は2024年には約30%だったが、現在は60%近くに高まっている。AIソフトウェアの性能が急激に向上していることが示唆される。
そして最近、格段に高性能なJetson Orinを採用したロシアの新型ドローンが新たに2種類見つかった。さらに、このほど就役した3機種目もこのチップを搭載している可能性が高い。
ひとつはシャヘド攻撃ドローンの新型で、「MS001」と呼ばれているものだ。このドローンはJetson Orinに加え、サーマルイメージング(熱画像)カメラとデジタルモデルを搭載している。ウクライナ軍のウラディスラウ・クロチコウ少将はリンクトインへの投稿で、これをたんなるドローンとは呼ばなかった。
「これはデジタル・プレデター(捕食者)だ。座標を持ち運ぶのでなく、みずから考える」とクロチコウは書いている。
これは誇張表現である。というのも、MS001は衛星航法システムを搭載しており、その意味で「座標を持ち運」んでいるからだ。とはいえ、もっぱら衛星航法のみに依存する基本型シャヘドと異なり、MS001がサーマルイメージングカメラとAIで地上の物体を認識し、攻撃できるのは確かだ。


