欧州

2025.08.14 11:00

「頭脳」はエヌビディアの半導体、ロシアがAI搭載ドローンを増強

ivkovmark/Shutterstock

Jetsonは非常に高性能なハードウェアである。スイスのチューリヒ大学のダビデ・スカラムッツァ教授率いるチームは2021年、Jetsonで動くAIシステムを搭載したドローンでレースに参戦し、世界トップクラスの人間操縦士を打ち破るという世界初の快挙を成し遂げた。

advertisement

このAIシステムは外部のモーショントラッカー(動作追跡装置)を頼りにドローンにデータを与えており、この点が不公平なアドバンテージになっていた。しかし、チューリヒ大のチームは2023年までに開発したAIシステムで、機体に搭載するセンサーと処理能力だけを用いて人間のチャンピオンを破った。

「わたしたちはとても興奮しています。人間が人間のために設計したフィジカルなスポーツで、AIが人間に勝ったのはこれが初めてだからです」と当時、スカラムッツァは筆者に語った。

この偉業は最近、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで再現された。オランダのデルフト工科大学のAI搭載ドローンはAIドローン同士のレースを制したあと、「AI対人間チャレンジ」で人間操縦レースの勝利者と対決し、見事勝利を収めた。出場した各チームのAIドローンもやはり、Jetsonベースのコンピューターを搭載していた。

advertisement

スカラムッツァによると、以前の研究時点でも、ドローンに搭載するAIの計算能力には「十二分な余裕」があったとのことだ。

以前のドローンでは旧型の「Jetson TX2」を使用していたが、現在は新型の「Jetson Orin」が使われており、計算能力はTX2の10倍超に高まっている。

「わたしたちがドローンレース用に開発したアルゴリズムの一部は、(米ドローンメーカーの)Skydio(スカイディオ)やZipline(ジップライン)といった企業で採用されています。教え子の何人かがこれらの企業で働いているんです」とスカラムッツァは教えてくれた。

チューリヒ大によって開発されたソフトウェアがウクライナで使用されている兆候はみられないものの、同じエヌビディアのハードウェアで動くAIシステムがほかのユーザーでも採用されていることは確実であり、その能力は人間の操縦士に匹敵する可能性がある。

次ページ > シャヘド自爆ドローンの新型もエヌビディアの半導体を搭載

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事