ドナルド・トランプ米大統領による関税が市場を圧迫するなか、政府が現地時間8月11日に発表した7月の消費者物価指数(CPI)は予想よりも低い伸びとなり、米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げに踏み切る可能性への期待を残す結果となった。
米労働省労働統計局(BLS)の発表によると、7月のCPIは前年同月比で2.7%の上昇となり、前月比からは0.2%の上昇だった。この前年同月比の数字は、FactSetがまとめた市場予想の2.8%を下回った。
より変動の激しい食品とエネルギーを除いたコアCPIは、前年同月比で3.1%、前月比では0.3%の上昇となった。これは、それぞれ3.0%と0.2%とされた市場予想を上回っている。
予想を下回るインフレ報告を受け、主要株価指数は時間外取引で小幅に上昇した。一時、ダウ平均株価先物は0.61%高、S&P500種株価指数先物は0.1%高、ナスダック総合指数先物は0.47%高となった。
インフレ率は依然としてFRBの目標である2%を上回っているものの、投資家は9月に行われる次回の金融政策決定会合での利下げに期待を示している。CMEのFedWatchツールによると、9月会合で0.25%の利下げが行われる確率は90.1%とされており、10月会合においては、さらに高い96.9%の確率で利下げが行われると予想されている。FRBは7月会合で政策金利を4.25%〜4.5%に据え置いたが、2人の理事が0.25%の利下げを支持していた。複数の理事が会合で異議を唱えたのは数十年ぶりのことだった。トランプからの利下げ圧力に直面しているジェローム・パウエルFRB議長は、米国経済は「堅調な状態」にあるとしつつ、関税の経済やインフレへの影響は「まだ分からない」と述べている。
トランプは11日、ヘリテージ財団のエコノミストであるE・J・アントニーを次期BLS局長に指名した。アントニーは今月初めにトランプが解任した前BLS局長エリカ・マクエンタファーを公に批判し、同局が発表した月次雇用統計の低調な結果を受けて彼女を「無能」と呼んでいた。バラク・オバマ政権下で大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めたジェイソン・ファーマンはXへの投稿で、アントニーは「まったく資格がない」人物だとし、「極端な党派的立場の持ち主で、関連する専門知識を有していない」と述べた。
今回のインフレ報告は、トランプが最近の雇用やインフレのデータをめぐりBLSを批判する中で公表されたものだ。トランプは、BLSが民主党に有利になるよう経済指標を改ざんしたと主張している。BLSの発表によれば、6月の非農業部門の雇用者数は7万3000人増にとどまり、市場予想を大きく下回った。また、失業率は4.2%となり、前回発表からわずかに上昇した。トランプはこの統計について「共和党と私を悪く見せるために細工された完全な詐欺だ」と述べていた。今回発表された7月のCPIは、FRBがより重視するインフレ指標とされる個人消費支出(PCE)価格指数に続くもので、先月発表された6月のPCE価格指数は前年同月比で2.6%の上昇となっていた。



