もっと速い車もあるし、もっと高価な車もある。しかし、自動車が音もせずボタンもない「走るコンピューター」に変貌しつつあるこの世界で、2025年型フォード・マスタングは今もなお1つの本質を理解している。それはすなわち、「運転とは、自分が運転していると感じるべきである」ということだ。この古典的なアメリカ車のファンは、まさにそれが理由で購入するのだ。
今回の試乗車(比較的小さな2.3リッター直列4気筒「エコブースト」エンジンに10速オートマチック・トランスミッションの組み合わせ)でさえ、長いこと忘れていた「周囲にいる他の誰かではなく、自分のために造られた機械」という感覚を与えてくれる。エンジンに火を入れた瞬間から、あなたがなぜステアリングを握っているのかを間違いなくわかっているというように咆哮を上げる。もちろん、それは稼働している充電ステーションを探すためではない。
依然としてマニュアル・トランスミッションも用意されているが、このオートマの試乗車もとても良かった。スポーツモードに切り替えると活発で、パブルシフトは反応が素早く、気分が高まってちょっとエンジンをレッドゾーンまで回してみたりしても完璧に楽しめた。試乗中、外気温は38度を超えることもあったが、車内では音楽を聴きながらエアコンを全開にしていれば、交通量が少なかったこともあり、まったく気にならなかった。激しい雨に見舞われても、楽しさが損なわれることは一切なかった。ただし、雪の中を走り出そうとは思わないだろう。
また、ダッシュボードには機械式のボタンがいくつかあり、手で触って回すことができる。ドライバーが実際に車を動かしていると自覚するのに十分な騒音が路面から伝わってくるし、ワッフル・ハウス(米国のレストランチェーン)で朝食を食べたトラック運転手のゲップのようにガスを吐く。車内にはサングラスが汚れないように入れておく小物入れの類などはない。平穏な車ではないということだ。
ステアリングには重みがあり、乗り心地は引き締まっているが突っ張るような硬さはない。高速道路に合流するためにヘルメットを被ったりタッチスクリーンのメニューを覚える必要はない。運転席に乗り込み、エンジンスタートボタンを押せば、「さあ、悪さをしようか」という気分になる。



