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2025.08.15 13:00

企業の「顧客サポート」を高品質化・省人化し、新たな収益源の座を狙うAIエージェント

takasuu / Getty Images

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インターネットの契約を解約したり、身に覚えのない請求を巡って企業の顧客サポート部門に異議申し立てをした経験がある人なら、そのプロセスをよく知っているはずだ。保留音、チャットボットとの対話、長い待ち時間が延々と続き、消費者に苦痛をもたらす。企業にとってはコストセンターであると同時に、これを解約防止策としている企業もあるようで、ブランドイメージを損なう要因でもある。

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2024年、調査会社Qualtrics XM Instituteは、満足度の低い劣悪な顧客体験によって世界全体で3.7兆ドル(約544兆円。1ドル=147円換算)の売上が危機にさらされていると報告した。多くの企業が日常業務を処理するために人工知能(AI)アシスタントを導入しているものの、そうしたツールは多くの場合、最終的な解決には至らない。

自ら考え行動する自律型AIエージェントの進化

しかし、新世代のAIエージェントは、ついにそれを変えるかもしれない。これらAIエージェントは、質問に答えるだけでなく、自ら計画し、実行し、複雑で多段階のリクエストをユーザーに代わって解決する。そしてこの変化はビジネス面で大きな意味を持つ。

ChatGPTのような生成AIツールは、ユーザーのプロンプト(質問・指示)に基づき、回答・要約・タスク(作業)の遂行などを提供するよう設計されている。注目点は、これら生成AIツールが、常に人間の入力に依存していることだ。一方、AIエージェントは自律性を備えており、推論し、計画を立て、行動を起こせる。つまり、料金交渉からフライトの変更、紛争の解決まで複数のシステムを横断して、多くの場合ユーザーの追加の指示なしに対応できる。

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この相違点は、Pine AI共同創業者のスタンリー・ウェイのような専門家にとって大きな意味を持つ。「私たちは、カスタマーサービスの未来は完全自律型だと信じている。その目標は、ユーザーにとって最も優先度の高い情報・作業項目・要望について、最小限の手間やストレスで処理することだ」と彼は語る。

ウェイは、自律型AIエージェントの進化を単なる効率化以上のものだと考えている。「エージェントモデルは急速に進化している。かつてのスクリプト駆動型のボットは、今ではあいまいな指示を推論し、リアルタイムで行動を更新し、ユーザーのフィードバックから学習するシステムに進化した」と彼は話す。

例えばPine AIのシステムは、計画立案エージェント、タスク実行エージェント、そしてメールやウェブ、電話を通じたユーザー対応エージェントの3つで構成されている。ウェイによると、このモジュール式アプローチは、企業がフロントオフィス業務とバックオフィス業務を切り分けるのと同じような効果があり、エージェントに専門性を持たせられる。

「1つの巨大なシステムではなく、複数の専門エージェントに個別の役割を持たせるほうが、より速く正確な結果につながることがわかった」と彼は言う。

チャットのサポートというと、ユーザーから問い合わせや要求があったときだけ反応する、受動的な仕組みを多くの人が想像するはずだ。しかし企業は今や、ユーザーの目的を端から端まで完了させ、かつ大規模に実行できる、能動的なAIエージェントを提供できるようになっている。

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編集=上田裕資

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