AIエージェントによって省人化し、新たな強みを生む
カスタマーサービスには時間だけでなく労働コストがかかる。BtoCブランドにとって、サポート業務はしばしば大きな支出項目であり、とりわけ解約率の高い業界や、課題解決が複雑な業界では顕著だ。調査会社ガートナーは、2030年までにAIエージェントが一般的なカスタマーサービス業務の80%を処理し、運営コストを最大30%削減すると予測している。これは単なる利益率の改善にとどまらず、競争での優位性にもつながる。
「私たちは、人間のワークフローを模倣する形でタスクを理解し、計画し、実行できるようシステムを構築した。より短時間で、より一貫性のある結果を出せる」とウェイは話す。Pine AIのエージェントは、人間と同じようにグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を操作できるため、ウェブサイトへのログイン、動的フォームの入力、複雑なウェブ環境のナビゲーションなども対応できる。単なるAPI連携、事前に決め打ちされた手順しか実行できないスクリプトだけに頼ることはない。
この能力は、現実の現場では非常に重要だ。例えば、ある企業の顧客対応業務では、同じ会社内でも部署によって手順や使うシステムがバラバラで統一されていないという場合や、処理の流れが外部業者のシステム内にあり担当者や顧客からは直接操作できない場合がある。
ウェイは、自動化は定型業務には有効としつつも、最も難しい部分は予期せぬ状況や複雑な事例に対処するようエージェントを訓練することだと説明した。「カスタマーサービスでは、最も対応が難しい20%のタスクが、80%の不満を生み出している。エージェントは単に行動するだけでなく、いつエスカレーションや一時停止をすべきかを判断する必要がある」と彼は述べた。
AIエージェントの最前線
カスタマーサービス分野におけるAIエージェントの最前線を切り拓こうとしている企業は、Pine AIだけではない。例えばAdept AIは企業向け(enterprise-wide)エージェントを手がけており、全社の主要業務と主要システムを横断し、統制・監査・権限管理の枠内で自律的に実行できるよう設計している。単なる定型動作ではなく、人間の社員のように業務知識や操作スキルを身に付け、状況に応じて柔軟にタスクをこなせるという。
Ottogrid(旧Cognosys AI)は、特にホスピタリティ業界やクイックサービス業界において、食事の注文から顧客クレーム対応までを管理するエージェントを提供している。この分野では、企業ごとに狙う市場は異なるが、彼らの根底にある仮説は共通している。それは、「自律的な実行こそがAIの生産性の次なる進化形だ」というものだ。


