CTPの成長戦略は、これまでのところ効果的に機能している。2024年に計画された1400万平方フィート(約130万平方メートル)規模の新規プロジェクトでは、年初の時点で契約済みだったのはわずか38%に過ぎなかったが、竣工時には92%に達していた。さらに、CTPは顧客基盤の多様化にも注力しており、単一テナントが総賃貸面積の2.2%を超えることはない。現状、物流関連が28%、製造業が26%を占め、特定の業種に依存しないポートフォリオを築いている。
それでもなお、CTPにとって特定産業の不振が業績全体に影響を及ぼす可能性は拭えない。例えば、同社の賃貸収入の21%を占める自動車業界は欧州での販売低迷が続いており、トランプ政権による自動車および部品の対米輸出に対する25%の追加関税が実施された場合、さらに打撃を受ける恐れがある。「自動車産業はCTPの収益において大きなウエイトを占めており、業績の回復が遅れれば同社にも波及するだろう」と、ジェフリーズのアナリスト、ピエール・エマニュエル・クルーアードは警鐘を鳴らす。加えて、CTPはヴォスのリーダーシップの下、2019年以降、年平均16%という驚異的なスピードで賃貸収入を拡大してきており、投資家の期待に応えるためにはこのペースで成長を続ける必要がある。「CTPの成長ストーリーを継続するには、新規プロジェクトの立ち上げと、テナントの継続的な獲得が不可欠だ」とクルーアードは指摘する。
ヴォスには、これらの問題に対する打ち手がある。それは、アジアからの新規顧客獲得と、欧州における防衛関連支出拡大という潮流を取り込むことだ。「ドイツでは、防衛産業からの引き合いが増えている」と彼は語り、半導体製造やクリーンテック分野への投資も拡大していると指摘した。「アジアの自動車企業がフォルクスワーゲンやBMWに部品を供給するには、工場から1日以内の距離に拠点を置く必要がある。つまり、ここが最適地になる」とヴォスは強調する。
トランプ大統領は4月9日、EUに対する追加関税の発動を90日間延期したが、ヴォスは関税戦争にも冷静な姿勢を崩していない。「最近の関税を巡る動向は、企業に中東欧への生産シフトを促すものであり、CTPにとっては追い風となる」と、ODDO BHFのブーマンは分析する。
ヴォスは、既存顧客のリテンションにも優れた手腕を発揮している。CTPのテナントのうち、賃貸契約終了後に再契約を結ぶ比率は87%と、上場している同業他社を凌駕する。同社の工業団地の一部には、従業員向けの社宅やレストラン、コンビニエンスストア、スポーツ施設、医療クリニックなどを備えたクラブハウスが併設されている。「新規契約の3分の2以上は、既存テナントによるものだ」と、CTPの最高財務責任者(CFO)であるリチャード・ウィルキンソンは言う。
CTPが成長を遂げる中、変わらないものが一つある。それは、ヴォスによるマイクロマネジメントだ。彼は今でも採用の意思決定に関与し、新規市場の視察も行っている。「私は大きなオフィスに腰を据えて帝国を支配するような経営者ではない。現場に身を置く方が性に合っている」と、彼は笑みを浮かべながら語った。


