米国時間8月11日早朝の時間外取引で、エヌビディアとAMDの株価が下落した。両社が中国へのAIチップ販売で得た売上の15%を米国政府に支払うことで合意したと報じられたためである。このトランプ政権との異例の取引は、両社が輸出ライセンスを確保するための条件とされている。
この件を最初に報じたフィナンシャル・タイムズによると、エヌビディアは対中輸出規制に準拠したH100のダウングレード版であるH20の売上について、その15%を米国政府に支払う。また同報道によれば、AMDも中国向けに設計されたMI308の売上に対し、同様に15%を支払うことで合意しているという。
匿名の米国政府関係者や事情に詳しい人物の話として、フィナンシャル・タイムズは、この合意が先週両社に付与された対中輸出ライセンスの必要条件だったと伝えている。
この合意によって中国向けAIチップの販売価格にどのような影響があるかは不明だ。
11日早朝の時間外取引で、一時エヌビディア株は1.16%安の180.61ドル、AMD株は2.3%安の168.79ドルをつけた。
米国政府関係者とAMDはまだ公にコメントしていないが、エヌビディアの広報担当者は複数のメディアに対し、「H20の中国への輸出は数カ月間停止している」が、「この輸出管理規則により、中国や世界全体における米国製品の競争力が向上する」ことを願っていると述べた。
2025年5月、エヌビディアCEOのジェンスン・フアンはポッドキャスト番組『Stratechery Podcast』の中で、中国へのH20の販売によって150億ドル(約2兆2200億円)の収益が見込まれると語っている。つまり、この取引により米国政府は最大22億5000万ドル(約3330億円)を得る可能性がある。また、先週発表されたAMDの2025年度第2四半期決算で、同社はMI308の対中輸出規制によって8億ドル(約1200億円)の損失が発生したと報告した。この同社の計算が正しければ、米国政府はさらに1億2000万ドル(約178億円)をAMDから得ることになる。
4月にエヌビディアが米証券取引委員会(SEC)へと提出した書類によって、トランプ政権が「中国(香港、マカオを含む)」や同国に本社を置く企業に対するH20の輸出に、追加制限を課したことが明らかとなった。同社は当時、これによって四半期で55億ドル(約8100億円)の損失が発生すると説明していた。7月、フアンはホワイトハウスでトランプ大統領と面談し、この輸出規制がAIと半導体分野における米国の優位性を損なうとして、H20の対中販売の再開を求めたという。その数日後、エヌビディアは米国政府から「ライセンスが付与される」との「保証」を得て、中国でのH20の販売を再開する計画を発表した。そして先週、フィナンシャル・タイムズは、米商務省がその対中輸出ライセンスをエヌビディアに発行し始めたと報じていた。



