昇進に伴う、報酬以外のメリットを検討する
給与が重要なのはもちろんだが、プロフェッショナルの世界では、給与だけが価値の尺度ではない。場合によっては、肩書きが変わったり責任が拡大したりすることが、目先の昇給を上回る長期的なキャリア上のメリットになることもある。例えば次のような点を考えてほしい。
・新しい肩書きとともに、他社でも注目されるようなスキルを身につけられるか
・新しい肩書きによって、会社の命運を握るようなプロジェクトに参加したり、経営幹部と面識を得たりする機会が得られるか
・新しい肩書きを得ることで、今すぐにではないにせよ、収入が将来的に増える可能性はあるか
曖昧な約束には要注意
ただし、会社側が口にする曖昧な約束には要注意だ。例えば、「半年以内に給与を見直そう」とか、「より上に行くための足掛かりだ」と言われるかもしれない。そうした約束とともに、具体的な目標が提示されたり、書面で合意を交わしたりするのでなければ、それは単なる言葉にすぎない。
「イエス」と答えることが妥当な場合
昇給なしの昇進を受け入れても問題ないのは、以下のようなケースだ。
・新しい役職に就けば、プロフェッショナルとして大きく成長したり、知名度がアップしたり、人脈拡大の機会が手に入る
・明確な期限があり、その先に金銭的な報酬や、さらなる昇進へとつながる道筋が見える
・金銭以外の福利厚生(柔軟な勤務時間、リモートワークという選択肢、休暇の増加など)が付随し、好条件に思える
境界線をきちんと引く
ただし、「イエス」と答えた方がいいと思える場合でも、境界線をきちんと引こう。将来的な給与の見直しや、一定の業績を達成した際のボーナス付与などが記された書面を求めよう。会社側は、昇進を打診した時点で、金銭的な見返りを提示できないこともあるだろう。しかし少なくとも、のちの見直しなどが「いつ」「どのようなかたちで」行われ得るのかについては、包み隠さず説明できるはずだ。
「ノー」と答えた方がいい場合
昇進オファーを断わるのはリスクが高いように思えるかもしれないが、断わるのが最も賢明な選択肢という場合もある。例えば、昇進に伴って責任が大幅に拡大し、以前より多くを求められるようになるのに、明確な見返りがない状態だ。そうなると、昇進したために燃え尽きてしまったり、会社側に不満を覚えたりするようになるかもしれない。次のような場合は、断わった方が賢明だ。
・新しい役職で得られるメリットよりも、仕事量増加による負担が大きい
・「いつ」あるいは「どのようなかたちで」金銭的な見返りが得られるのかがはっきりしない
・昇進のオファーは、どちらかというとコスト削減策であって、社員の成長に本気で投資しようという姿勢が会社側から感じられない
「次の交渉の機会」につながる説明をする
昇進を断わるといっても、完全に話を打ち切る必要はない。プロフェッショナルな反応として、次のように説明しよう。「このようなお申し出はとても光栄ですし、信頼を寄せてくださったことに感謝します。ただ、見合った報酬を得られないまま、追加の責任を引き受けることは難しいと感じています。状況が変わった場合は、改めてこの件について話し合いの場を持てれば幸いです」。

