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2025.08.13 14:15

AIトラッキング・スポーツテックの未来、なぜMIXIとPlayboxは「世界最高峰」に挑んだのか

SNSとスマホゲームで国内市場を席巻してきた株式会社MIXIと、「人の動きを計算可能にする」ビジョンを持ちAI技術によりスポーツの可能性を広げる挑戦を続ける株式会社Playboxは2025年6月、ともにAI・コンピュータビジョン分野における世界最高峰の国際会議「CVPR 2025」(※1)におけるコンペティション「SoccerNet Challenge(Game State Reconstruction)」(※2)に出場、世界4位という成績を収めた。

※1)CVPR(The IEEE/CVF Conference on Computer Vision and Pattern Recognition):コンピュータビジョン、人工知能、機械学習、および関連分野の研究開発において、業界最先端の研究成果が発表される世界最高峰の国際会議。
※2)SoccerNet Challenge(Game State Reconstruction):SoccerNetが主催する「Game State Reconstruction(GSR)」タスクに関する国際的な競技会。サッカーの試合映像を用い「状態認識(GSR)」の自動化を目的とした高度なAI技術が競われる。GSRはスポーツのデータ解析や戦術分析に広く応用可能な注目のテーマであり、モビリティを含む産業界からも高い関心を集める。

両社が協業により挑戦したのは、1台の光学カメラ映像からサッカーの試合状況を丸ごとデジタルツイン化し、サッカーの試合における状態認識(GSR:Game State Recognition)を競う大会。簡単に言うと、AIがサッカーの試合映像から「今、フィールド上で何が起きているか」を高い精度で自動的に認識する技術を競うコンペティションだ。

「状態認識(Game State Reconstruction:GSR)」とはこの場合、サッカーの試合映像から、誰が(選手か、ゴールキーパーか、審判か)、どのチームに所属し、ピッチのどこにるか…といった詳細な情報を、AIが自動で把握する技術のこと。この精度が100%に近くなればなるほど、戦術分析やプレー評価が劇的に進化し、最終的にはファンがより深く試合を楽しめるようになる未来が見て取れる。AIがリアルタイムで各選手の貢献度や戦術の有効性を分析し、それが試合中継に反映される将来がやって来るかもしれない。

世界のスポーツは、もはやテクノロジーから切り離すことはできない時代となっている。MLBアドバンスド・メディアのジョセフ・インゼリロさんが開発した「StatCast」のデータは、今や我々日本人に毎日のように大谷翔平選手のホームランの打球角度、打球速度、そして飛距離を瞬時に届けてくれる。2022年、サッカー・ワールドカップのカタール大会では「三笘の1ミリ」によって、日本代表がスペイン代表を撃破する決勝点が生まれた。これは現在、ソニーが保有する「ホークアイ」によってサッカーのピッチを3Dでデジタルツイン化、これにより高精度のVARが導入された賜物である。モータースポーツにおいてはテクノロジーの進化は顕著であり、マシンの状態は常にピットで把握されている。特にフォーミュラEでは市街地サーキットを主戦場とするために、年に一度しか走行が許されていないコースを事前に仮想空間に再現、その空間内においてシミュレーションを繰り返した後、本番を迎える。

では、MIXIがなぜ今、畑違いとも思えるスポーツテックの、しかも最も難易度の高い大会で世界の強豪たちを相手に静かな闘いを挑んだのか。その背景には、海外に覇権を握られたスポーツテック市場を覆し、「メイド・イン・ジャパン」の技術で世界を獲るという壮大な野望が見え隠れする。精鋭Playboxとの出会いから、世界を驚かせた技術の核心、そしてMIXIが描く未来構想まで、その挑戦を紐解く。

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文=松永裕司

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