幸せとは一体何だろう。ポジティブ心理学の先駆者である心理学者マーティン・セリグマンは、まさにこの問いを追求し、永続的なウェルビーイングとはつかの間の快楽を追い求めることではないことに気づいた。それは、心が満たされ、生きていると深く感じられる人生を築くことだ。
そこでセリグマンはPERMAモデルを編み出した。ウェルビーイングへの道筋を示す研究によって裏付けられた現実的なフレームワークだ。単に「前向きに考える」よう促すのではなく、5つの柱を軸に人生を構築することを勧めている。その5つの柱とは以下のもので、PERMAはこれらの頭文字をとっている。
PERMAモデルを構成する5つの柱
・Positive Emotion(前向きな気持ち)
・Engagement(関与)
・Relationships(人間関係)
・Meaning(意味)
・Accomplishment(達成)
この記事ではPERMAモデルの中身と、それぞれの柱を今日から立てることができる実践的な方法を紹介する。
1. 前向きな気持ち
これは有害なポジティブさのことを言っているのではない。ほんのわずかでも、意図的に喜びと感謝の気持ちを取り入れることだ。多くの人は、幸せとは自動的にいつも明るいことだと考えている。
だが専門誌『Emotion Review(エモーション・レビュー)』に2020年に掲載された研究で、感謝の気持ちを綴る、喜びをかみしめる、親切にするといったシンプルな行為を心がけることで前向きな気持ちが確実に強まり、身体の健康にも貢献することがわかった。重要なのは、こうした気持ちは育てることができるという点だ。
前向きな感情は人生における試練を消し去るものではないが、視野を広げてくれる。前向きな感情を育む方法は以下の通りだ。
・毎晩3分間感謝の気持ちを持つ:
どんなに些細なことでも、その日良かったと感じたことを3つ挙げる。時間が経つにつれて、脳はストレスばかりをキャッチしようとするのではなく、うまくいっていることに気づきやすくなる
・「喜びをかみしめる」練習をする:
何か楽しいことが起きたら、立ち止まってその瞬間に浸ろう。紅茶を飲むとき、ゆっくり呼吸を3回する。子どもが笑ったら、その表情を目に焼き付けてから次のことに取り掛かる、など
ただし、前向きな感情を育むことを、難しい感情を否定したり抑圧したりすることと混同してはいけない。感情の抑圧はストレスを増やす。バランスが重要だ。厳しさを感じながらも意図的にさほど辛くない瞬間に意識を向けるようにしよう。



