欧州

2025.08.10 09:00

トランプの「39%関税」にスイス激震 引き下げ交渉の行方は

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ドナルド・トランプ米大統領がスイスからの輸入品に39%の関税を課したことに、スイスでは衝撃と絶望、そして大きな憤りが広がっている。スイスの主要紙ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング(NZZ)は、この措置を「ばかげている」と評した。おまけに、この関税率が発表されたのがスイスの建国記念日(8月1日)だったことも、スイスではひどい侮辱だと受け取られた。

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スイスの財界幹部や経済学者らは、この関税率が金(ゴールド)の輸出によってゆがめられた貿易赤字に基づいて算出されたことに困惑している。しかも、米国とスイスの貿易収支は足元では米国の黒字に転換している。

さらに言えば、スイスから米国への輸出品目の多く(たとえばスイスチョコレート、腕時計、より重要なのは米ボーイングなどで採用されている特殊な工場製品)は、米国内に競合相手が存在しない。また、スイスフランが通貨安の状態にあるわけでもない。

スイスでは、国際舞台で自国が果たしている役割や、米国外交の仲介役(一例を挙げれば在イラン・スイス大使館は伝統的に米国の利益を代表してきた)を務めてきたことが顧慮されていないという不満もある。

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通常、スイスの政治は非常に落ち着いているが、今回の件では政治スペクトル全体におよぶ内紛状態となり、カリン・ケラー=ズッター大統領兼財務相の責任を問う声が強まっている。その結果、このほど米首都ワシントンを再び訪れた交渉団には、保守系のスイス国民党(SVP)からの代表者や、通商部門や財務部門からより多くの担当官が加わることになったもようだ。

スイスのケースは、ホワイトハウスの方法論の欠陥を浮き彫りにしている。スイス経済はきわめて強靭だとはいえ、39%もの関税を受け流せるわけではない。わたしたちの見立てでは、スイス側が米国側を説得するうえでは、2国間貿易関係の再構築、スイス産業界による米企業への貢献の再評価、スイス産業界による対米投資の約束が中心になるだろう

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翻訳・編集=江戸伸禎

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