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2025.08.12 13:00

AIの未来を支える「光インフラ」のイスラエル企業Teramountが74億円調達

Shutterstock.com

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人工知能(AI)の急速な進化と普及によって、データセンターの電力需要が急増していることが盛んに報じられている。しかし、問題は電力だけではない。生成AIモデルが拡大し、データセンターがその計算処理に追われるなかで、議論の中心には主にGPUやクラスター、チップの増強などが置かれてきた。しかし、この議論を掘り下げていくと、真の制約はマシンの演算速度ではなく、インフラ層の別の部分にあることが明らかになってくる。

「シリコンフォトニクス」の可能性

高次元のデータを超大規模にAIモデルに供給するためには、1秒あたりテラビット級のデータを、信号の劣化を最小限に抑え、消費電力を抑えつつ転送できるインフラが必要となる。そして、かつてサーバー内部やラック間など短距離接続の標準であった銅線ベースの接続は、そうした負荷に耐えきれず、限界を見せ始めている(1990年代以降のデータセンターやネットワーク機器では、長距離接続については光ファイバーが主流)。そこでこの分野の専門家や投資家たちは、「シリコンフォトニクス」と呼ばれる技術に目を向けている。光を用いてデータを高速かつ低消費電力で伝送する、短距離銅線配線の代替となるファイバー接続技術だ。

そんな中、イスラエルを拠点とするシリコンフォトニクスのスタートアップTeramountが7月29日、シリーズAラウンドで5000万ドル(約74億円)を調達したと発表した。出資者には、AMD Ventures、Samsung Catalyst Fund、Koch Disruptive Technologies、日立ベンチャーズなどが名を連ねている。

Teramountの提案はシンプルだが重要な意味を持つものだ。同社は、電子ではなく光子を使ってチップ間の接続を効率化し、AIの物理的システムがその成長の制約とならないようにしている。

高発熱・帯域幅上限というボトルネックの突破

銅線は何十年にもわたり驚くほどよく機能してきた。しかし今日のAIクラスターのように、数千ものGPUを用いたトレーニングが数週間にも及ぶような状況下では、従来の配線がボトルネックになりつつある。電力のロス、熱の発生、帯域幅の上限がシステムをスケールさせる上で課題となっている。

そこで打開策と見込まれているのが、シリコンフォトニクスだ。この技術は、光ファイバーを通じて信号を送ることで、エネルギー使用量を削減し、発熱を抑え、大容量のデータ伝送を可能にする。Teramountのアプローチは、着脱式の光ファイバーとチップを直接つなぐコネクターを中核としており、半導体と光学部品を同一基板上に実装する「Co-Packaged Optics(CPO)」に最適化している。

調査会社Yole Groupによれば、CPOの市場は2028年までに21億ドル(約3087億円)に達すると見込まれている。またシリコンフォトニクス全体の市場は、2030年までに96億5000万ドル(約1.4兆円)に拡大し、2023年の規模のほぼ4倍になると予測されている。

エヌビディア、インテル、AMD、ブロードコムのような大手はすでにこの分野の未来に向けた構築を始めている。しかし、保守性や大規模な展開が可能かどうかについては、まだ課題が残されている。そこに入り込む余地を見出したのが、Teramountのような企業だ。彼らは、単に高速な接続技術を提供するだけでなく、現場ですぐに使える技術に仕上げている。

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編集=上田裕資

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