放射線の脅威
パーシビアランス探査車が採取したサンプルの回収に数十年に及ぶ遅延が発生すれば、火星に降り注ぐ宇宙線による影響が生じる可能性もある。サンプルの大半は現在、探査車内の安全な格納庫に収納されているが、この他にも将来のサンプル回収機が着陸する地点の近くの地表に置かれたままになっているサンプルがある。
その目的は、もし何らかの理由で探査車が故障し、ジェゼロクレーターの底に戻れない場合でも、前もって地表に配置された10本のサンプルを回収機が集めて地球に持ち帰れるようにするためだ。
サンプル自体は、パーシビアランスがわずか約7cmの深さまで掘り進めるコア(岩石や土壌をドリルでくり抜いたサンプル)採取機構を用いて収集したものだ。だが、現時点で地面の上に置かれているサンプルは、地表の放射線の影響をはるかに受けやすくなっている。
ドイツ航空宇宙センター(DLR)の惑星科学者のジャンピエール・デ・ベラは、レイキャビクで取材に応じ、地下深度7cmにおいても、地表に降り注いでいる素粒子放射線や銀河放射線について考慮する必要があると語った。さらには、地表にある探査車の内部に収納された状態で数年が経過すると、サンプルに元から含まれていた地下の有機物は確実に変質する恐れがあると、デ・ベラは指摘している。
アイスランドについて
アイスランドの高地に1週間滞在して、冷泉から温泉、河川までのあらゆる種類の環境にある酸化鉄鉱物のサンプルを採取する予定だと、バランティナスは話す。目的は、古代の火星で起きていたかもしれないプロセスのための類似環境としてアイスランドを利用することだと、バランティナスは続けた。
他のどんな場所よりもアイスランドが適しているのはなぜだろうか。
バランティナスによると、アイスランドは火山島で、岩盤は玄武岩でできている。そのため、アイスランドでは玄武岩の風化によって二次鉱物が生成されており、類似の二次鉱物が火星で観察されているという。
その一方で、世界中の宇宙生物学者は、火星のサンプルを適時に地球に持ち帰ることが可能になるように願っている。
火星が宇宙生物学にとって非常に重要な意味を持つ理由についてはどうだろうか。
米宇宙科学研究所(SSI)の上級地球化学研究員のベントン・クラークは、レイキャビクで取材に応じ、研究者が太陽系外惑星の生命を忙しく探索している一方で、太陽系には手の届くところに火星があると語っている。あとは火星のサンプルを持ち帰るだけでよい。そうすれば、はるかに多くのことを学べるだろうし、生命の痕跡が見つかるかもしれないと、クラークは述べている。


