レイキャビクの例会で発表されたバランティナスのチームの研究結果では、特に38億年前の直径45kmのジェゼロ衝突クレーターを調査している。ジェゼロを形成した天体衝突が起きたのは、地球に最初の生命が誕生したのとほぼ同時期で、当時は火星の表面に液体の水が安定して存在していた。
バランティナスの研究では、NASAの火星周回探査機マーズ・リコネッサンス・オービター(MRO)の観測データを用いてジェゼロクレーター縁の組成を解明するとともに、天体衝突後に物質がどのように移動し、どこに堆積したかを理解するための数値シミュレーションを実行したという。
太古の岩石
バランティナスの研究結果は基本的に、ジェゼロクレーター縁の物質は多様性に富んでおり、38億年前の生命生存可能な環境を表している可能性があることを示している。なぜなら、クレーター縁の物質には一次鉱物だけでなく、液体水が存在したことによる二次的な変質鉱物も含まれているからだと、バランティナスは説明した。
なぜ地質学的な多様性が重要なのだろうか。
バランティナスによると、多様性は鉱物特性と化学的性質がより複雑であることを意味する可能性が高く、これは環境の生命生存可能性がより高いことを意味している可能性がある。同様に3~4種類の鉱物を確認していても、組成に多様性がなければ、それは生命生存可能な環境ではないことを意味する可能性が高いという。
ジェゼロの天体衝突が起きた当時の火星には、どのような種類の大気があったのだろうか。
バランティナスによると、当時の大気は、液体の水が表面に存在できるほどの濃さがあった可能性が高い。おそらく窒素や二酸化炭素、水蒸気などが含まれていただろうという。
パーシビアランスはすでに、これまで火星の表面で採取された中で最古の岩石をいくつか発見している。しかしながら、火星の歴史について本当に理解されていることの限界を押し広げる必要があり、これに対しては火星探査の最も熱心な支持者でさえもストレスと戸惑いの両方を感じている。そういうわけで、世界が提供できる最高の研究室で分析するためにサンプルを回収することが、人類が太陽系科学を理解する上で極めて重要になるのだ。


