「ちょっとした仕事」に取り掛かったはずが、1時間たっても終わらない、という経験はないだろうか? それはあなただけではない。脳は、作業時間を正確に予測することが苦手で、その結果、時間やエネルギー、そして勢いを失ってしまう。
これは単なる計画の甘さではなく、心理学的な現象だ。計画錯誤(Planning fallacy)という、十分な学問的裏付けのある認知バイアスが関係している。
計画錯誤という概念は、心理学者のダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーによって初めて提唱された。このバイアスは、たとえ過去に同じタスクを行なったことがあっても、私たちがタスクの完了にかかる時間を一貫して過小評価する理由を説明している。カーネマンは著書『ファスト&スロー』(邦訳:早川書房)でこのバイアスを考察し、私たちの脳はパフォーマンスを予測する際、楽観的に働くようにできていると説明している。
ただし、一筋縄ではいかない。
多くの人がタスク(作業)にかかる所要時間を過小評価する一方で、過大評価する人もいる。考えすぎたり、入念に計画したり、先延ばしにしたりする傾向がある人は、タスクの複雑さやリスクを過大評価する可能性がある。こうした傾向は、ハイ・アチーバー(秀才型)や完璧主義者(筆者の「時間管理」クイズをしてみてほしい)のほか、職場でのトラウマや極度のプレッシャーを経験した人にしばしば見られる。
過大評価においては、「これは30分で済むだろう」と考える代わりに、「失敗したらどうする?」とか、「もっと準備時間が必要だ」といった思考に陥る。こうした感情的な反応により、タスクは実際より大きく、圧倒されるもののように見えてくる。
要するに、過小評価でも過大評価でも、結果は同じだ。カレンダーが混乱し、1日が無駄に過ぎてしまう。



