顧客の感情を喚起する関係性の構築
ニッチ企業が、業界でも最大手の企業を上回ることが多いもう1つの分野として、顧客との間に感情を喚起する関係性を構築する能力が挙げられる。それぞれの顧客向けにカスタマイズされた体験の提供、あるいは対面でのコミュニケーションなど、どんな手法を模索するにせよ、感情的なつながりを築こうとするこうした取り組みは、顧客を引きつけ、維持する上で強力な手法になる。
ハーバードビジネスレビュー誌で紹介されたある研究結果でも、ブランドが自らのメッセージ伝達において、感情に与える「インパクトの高い」動機づけを用いると、顧客は、ブランドに対してより強いつながりを覚え、製品への満足度が向上し、ブランド間の差別化にも成功しやすくなるとされている。しかもこれは、家庭用洗剤のような、非常に競争が激しいカテゴリーでも当てはまるとのことだ。
自社ブランドに関するやり取りをあらゆる面でパーソナライズ
ニッチ企業は、より大規模なブランドに比べて、より個人にフォーカスした展開が可能なことが多い。そのため、主要な感情的欲求に基づいて、メッセージの内容や顧客体験を調整することも、より容易になる。こうした顧客の欲求としては、心身の健康を実感したい、将来への確信を得たい、所属意識を持ちたい、といったものがある。
多くのニッチ企業は、AI(人工知能)などのツールを用いて、顧客と1対1ベースの関係を築き、自社ブランドに関するやり取りをあらゆる面でパーソナライズしている。
より個々人に即した体験を提供できるというニッチ企業の強みは、今どきの顧客の心をつかむ上で有利に働いている。今の顧客たちは、業界を代表するような大企業に対して、「個人を顧みない」というイメージを持ち、幻滅の度を深めているからだ。
自分のニーズに寄り添ったやり取りを期待する顧客が全体の71%に達し、そうでない時には不満を覚えると述べる者の割合も76%を占めていることを考えると、これは特に重要なポイントだ。


