ウイスキーの熟成過程を人生の節目と共に楽しむサービスが人気だ。人々の情緒を動かす優れた商品がもたらすものとは。マクアケ創業者による好評連載第55回。
最近、物価高や将来への不安などの影響で、世の中には閉塞感が漂い、未来に希望をもちにくい空気さえ感じられる。人々の財布の紐は固くなり、消費マインドも冷え込みがちだ。しかし、そんな時代の空気を打ち破る、まるで未来への希望を「買う」ような、ある特別な商品が多くの人々の心を動かした。生活者向けの新商品や新サービスを応援購入できるECプラットフォーム「Makuake」でキリンビールが展開した「人生を共に生きるウイスキー」という新プロジェクトだ。
これは「20年後の君と一生忘れられない乾杯を。」という印象的なキャッチコピーのもと、ひとつのウイスキー原酒を20年間かけて熟成させ、その変化を人生の節目と重ね合わせながら共に楽しむという商品だ。2019年から25年までに蒸溜された原酒を樽に詰め富士御殿場蒸溜所で熟成。数年ごとに熟成途中のウイスキーのミニボトルが届けられ、20年目には長期熟成を終えたウイスキーが届けられる。
例えば大切な子どもが生まれた時にこの原酒を購入し、成長の節目ごとに子どもの歳と同じ年月熟成したウイスキーを夫婦で味わい、子どもが20歳になったときには“生まれてから大人になるまで共に成長した”特別な一杯を家族で乾杯する。そんな人生に寄り添う物語が描かれている。
この商品は予約販売開始からわずか4分で、目標としていた1億円の応援購入額を突破し、当日中に用意された約2500本弱の在庫が完売するという記録的な盛り上がりを見せた。最終的な応援購入額は約2億7000万円を超え、これは「Makuake」において単日での史上最高額記録にもなっている。
価格設定は税込み11万円と決して安くないにもかかわらず 、これだけ多くの人々がこのプロジェクトにお金を払った事実には驚かされた。
世の中にはほかにもさまざまなウイスキーがあるなかで、なぜ人々はこのウイスキーにこれほど熱狂したのだろうか。



