マーケティング

2025.08.15 13:30

4分で完売した20年後のウイスキー 未来の体験がヒットを生む

情緒的な購買体験が価値を生む

「これはただのお酒ではなく、人生の節目や日々の営みにそっと寄り添う“時間の贈り物”だ」と、このウイスキーを開発したチームも語っているように、購入者にとってこのウイスキーは単なる商品以上の意味をもっていた。購入者たちが買ったのは、「ウイスキー」という商品そのものやその金銭的な価値だけではなく、「未来の希望あるシーン」だったのではないだろうか。

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自分や家族の未来に訪れる特別な瞬間を思い描き、その希望を手元に届けてもらう。そんな情緒的な価値提案が多くの人の共感を呼んだのだろう。プロジェクトページには「子どものために購入しました」「一緒に飲む20年後が楽しみです」といった声が数多く寄せられ、自分の子どもや孫の誕生、結婚、就職、定年などさまざまな人生の節目の思い出としてこのウイスキーを活用したいという反響があった。

この購買体験は、いわば未来を先取りして「希望を買う」ようなものだ。厳しい時代であっても、人々は心から共感できる物語や未来への希望ある約束に対しては惜しまずお金を使う。そのことを今回のプロジェクトの成功が雄弁に物語っている。

物価高のなか安売り合戦が続く一方で、未来への希望を託せる情緒的な購買体験には、大きな可能性が秘められている。生活者が待ち望む未来の希望あるシーンを提供できるのであれば、閉塞感に覆われた社会においても人々の人生を豊かにできるヒット商品が生まれるのではないだろうか。

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今回のキリンビールが生み出した新しいウイスキーとの付き合い方には、そんなヒントがふんだんに含まれている。


なかやま・りょうたろう◎マクアケ代表取締役社長。サイバーエージェントを経て2013年にマクアケを創業し、アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」をリリース。19年12月東証マザーズに上場した。

文=中山亮太郎 イラストレーション=岡村亮太

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