キュレーターとしても活動する斯波は、5月から6月にかけて東京・四ツ谷のMikke Galleryで開催された展覧会「新次元 - 拡張する意識」を手がけ、日米で活躍する7人のアーティストが参加。チベット密教を信仰するルー・ヤンがAIによって輪廻転生を表現した映像作品、たかくらかずきによるデジタル思考の本気の曼荼羅、世界で初めて国際宇宙ステーション(ISS)の外壁に展示された野村康生による作品などが展示された。
生成AI、NFT、宇宙……と先端テクノロジーにあふれる一方で、仏教や哲学など精神的な面にも光が当てられているのは「技術が進むほど、人の意識のあり方はシンプルになっていくと感じる」という斯波の関心からだ。新しいテクノロジーとアートの関係性を見つめるほどに、東洋思想の価値に気づかされるという。加えて、今後日本人アーティストたちがより重要な存在になると確信しているとも話す。
「自然、人、モノなど全てを尊重して共創するなど、日本に根付くマインドセットは新しいアートのあり方と相性がいい。かつ、日本はこれまで注目されてこなかった異才の宝庫です。そこで大事なのは、マーケットや海外に迎合しないこと。日米文化交流のハブとして、真摯にアートに向き合うアーティストを支援していきたい」
斯波雅子◎ブルックリン実験アート財団(BEAF)、ONBD共同創設者。20年以上にわたりNYを拠点に活動し、アジア文化系非営利団体でのマネジメント経験を生かし、近年はアートとテクノロジーの融合を通じた事業化とキュレーションに注力する。


