企画展、芸術祭、フェア、コレクションなど多彩な話題が飛び交うアートの世界。この連載では、毎月「数字」を切り口に知られざるアートな話をお届けしていく。今回はニューヨークの視点。アートとテクノロジーを見つめて気づいた日本の価値とは。
世界的なメガギャラリー、デイヴィッド・ツヴィルナーが5月、アーティストの西村有を取り扱うことを発表した。日本人として草間彌生や河原温らと並ぶこととなる。このニュースを「とても勇気づけられること」と話すのは、20年以上にわたりニューヨークを拠点にアーティスト支援を行う斯波雅子だ。
所属発表に先駆けてアッパーイーストにある同ギャラリーでは西村の個展が始まり、そのオープニングは同スペースで過去最多の来場者を記録。「有力な美術館のキュレーターや一流のアーティストが集まり、西村さんを称賛していた」という。
斯波曰く「業界で最もリスペクトされている」ツヴィルナーは、徹底した“アーティスト・ファースト”の考えで傑出したアーティストを見抜き、美術館との橋渡しをするなど、その活躍のために力を尽くす。ギャラリーは売るのが仕事ではあるが、良い作品であれば自然と買い手はつくというスタンスだ。しかし、良い作家であろうともその目利きにかなうのは一握り。斯波は「作家がそこに到達するまでをサポートするのが私たち非営利団体の仕事」という。
例えば斯波が2024年に共同設立したブルックリン実験アート財団(BEAF)では、アーティスト・レジデンシーや研究支援を行う。昨春には、現代芸術振興財団とのプログラムでアーティスト・高橋銑のNY滞在をホストした。一般的にレジデンシーでは成果物の制作を求めるが、BEAFではそうした即興性は問わない。「現代アートの中心であるNYでできるだけ多くの体験、発見をし、まったく違う視点をもって帰ってもらう。得た刺激が何年か後に作品に反映されることを期待している」。



