AI

2025.08.08 14:00

「バイブコーディング」が示す新たな起業モデル──AI時代の可能性とリスクに迫る

Boy Wirat / Getty Images

バイブコーディングの限界を直視する――次に待ち受ける試練

そこでは、創業者たちはバイブコーディングで実現できることの限界を直視しなければならない。GitHubのドムケが発した警鐘は、AIの可能性を否定するものではなく、どこで非技術者から専門的な技術を持つエンジニアや開発チームにバトンが渡されるのかという境界を示すものだ。AIは「ゼロからイチ」へのプロセスは加速できるが、責任を持ったスケールのためには、優れたアイデアを本当に信頼できるプラットフォームに仕上げるための精緻なエンジニアリングが必要だ。

advertisement

ジンと彼のチームは、そのことを理解しているようだ。Gigglesは伝統的なエンジニアリングスタックなしで構築されたが、ここに来て、技術的基盤への投資を進めている。共同創業者で開発責任者を務めるワンは、「創造性をスケールさせるためには、依然としてコーディングの規律が必要だ」と認めている。それは彼らのAIファーストという出発点を否定するものではなく、むしろそれを洗練させるものだ。

Gigglesや類似したスタートアップを次に待ち受ける試練は、AIが製品を立ち上げられるかどうかではない。ここで問われているのは、その製品が他者にとって頼れるインフラに成長できるかどうかだ。

誰が早く作れるかではなく、誰が長く残るものを作れるか

これからの10年で何が起ころうとしているのか? 現状の流れは「ハイブリッドな創業者」の登場を示唆している。それは、明確なクリエイティブビジョンとAIリテラシーを備えつつ、経験豊富なオペレーターやエンジニアを引き入れて製品を強固にしていくという人々だ。それこそが、新たな起業モデルだ。まず迅速にプロトタイプを作り、その後に技術・組織・ビジネスを前提とした計画・運用・規律を築く。

advertisement

業界の重鎮、LinkedIn共同創業者のリード・ホフマンもその可能性を認めている。「AIをツールキットに取り入れることは、あなたの魅力を飛躍的に高める」と述べている。ただし彼を含む人々は、初期のAIによる優位性が、長期的なリードに直結するわけではないと警鐘を鳴らす。AIが生成するコードの精度が向上するにつれて、テスト、レビュー、セキュリティも同様に高度なものにする必要がある。

結局のところ、バイブコーディングの台頭は現実に起こっているが、それは物語の半分にすぎない。ここで重要なのは、アーキテクチャ、実行力、そして人間の判断だ。GigglesやBase44といった「AIネイティブ」な新興勢力が物語の序章を担っているとしても、その後の展開は、これら創業者たちが即興的な「バイブス(感覚)」を、技術・組織・運用・価値提供のエコシステムからなる本物のインフラに変えられるかどうかにかかっている。

「最終的に重要なのは、誰が早く作れるかではなく、誰が長く残るものを作れるかなんだ」とジンは語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事