風力発電 堅調だが減速傾向に
風力発電量も2024年に過去最高を記録し、世界全体で9.0EJに達した。だが、風力発電の過去10年間の年間平均成長率7.2%は、太陽光発電の数字に比べると見劣りする。絶対的な発電量では、風力は依然として太陽光を上回っているが、それぞれの成長率を見ると、風力発電が優勢な現状は長くは続かないことが予想される。
中国の2024年の風力発電量は3.6EJに達し、米国と欧州連合(EU)の合計を上回る規模で世界の首位に立っている。2位の米国は約1.7EJで、電力の約1割を風力発電が占めた。他方で、太陽光と同様、米国の風力発電も許認可の遅れや送電網の制約に直面している。欧州は、特に北海の洋上風力発電への長年にわたる投資により、風力が太陽光を常に上回っている世界で唯一の地域となっている。
水力発電 成長は頭打ち
水力発電は依然として世界の再生可能エネルギーの大部分を占めており、2024年には約16.0EJに達したが、勢いは衰えつつある。水力発電には地理的条件による制約や環境問題への懸念があることから、過去10年間の成長率は年平均1.4%と低迷している。
ノルウェー、スウェーデン、ブラジル、カナダなどの国々では、水力発電がエネルギー需要全体の1割以上を賄っている。ブラジルでは、分散型太陽光発電が農業部門で急速に普及しつつあるが、カナダのように水力発電に依存し、太陽光や風力の導入では後れを取っている国もある。
先進国と途上国 形勢の逆転
恐らくデータから浮かび上がってくる最も重要な傾向は、OECD加盟国と非加盟国のバランスが変化していることだろう。2014年時点では、先進国から成るOECD諸国が再生可能エネルギー技術の展開で主導的な役割を担っていた。今日、形勢は逆転している。非OECD諸国は現在、OECD諸国より多くの水力を除く再生可能エネルギーを生産しており、成長速度も速い。
この成長をけん引しているのは野心だけでなく、経済的な側面もある。太陽光発電と風力発電は、世界の多くの地域で競争力のある新たな電源と見なされている。途上国は燃料の輸入を減らし、地元で雇用を創出し、送電網の信頼性を向上させるために、これらの発電技術を積極的に導入しているのだ。
結論 エネルギー転換と需要の現実
データから明らかなことは、再生可能エネルギーはもはや隙間を埋めるだけの存在ではないということだ。とはいえ、少なくとも現状では変革を起こすほどにはなっていない。
再生可能エネルギーへの転換は、世界的な電力需要の増加に追いついていない。太陽光発電は風力発電を上回る勢いで成長している。途上国は、これまで再生可能エネルギーを推進してきた先進国をしのいでいる。一方、水力発電は影を潜めつつある。そして現在も化石燃料が世界の電力を支え続けている。
だが、楽観できる要素もある。再生可能エネルギーにかかる費用が下がり続けていることだ。技術革新も続いている。途上国は再生可能エネルギーを迅速に拡大できることを証明している。しかし、当分の間は、再生可能エネルギーは拡大し続ける電力需要に対して苦しい戦いを強いられるだろう。


