「ポルターガイストの囚人」上條一輝
ホラー小説の新たな登竜門である「創元ホラー長編賞」は現在その第2回を募集中だが、実はこの賞は東京創元社の記念事業として1回限りの新人賞の筈だった。しかし受賞作「深淵のテレパス」に対する大きな反響が、主催者を動かしたという。その受賞者として注目された上條一輝の第2作が「ポルターガイストの囚人」(東京創元社刊)である。
前作に続いて登場する会社員でユーチューバーの芦屋晴子と越野草太の超常現象調査コンビは、売れない俳優からの依頼で、築70年を越える彼の実家で起きた霊の仕業としか思えない怪異現象と遭遇する。ところが2人の調査が功を奏するかと思われた矢先、突如依頼人は失踪し、草太らの身辺にも怪しい影が出没する。
終盤でスペクタクルに畳みかけた前作に負けず劣らず、今回も怒涛の展開が待ち受ける。合理主義の視点をも併せ持った主人公らの調査のスタイルにも磨きがかかり、チーム芦屋の個性派たちにも親しみが増しているが、そこはかとなく漂う終末の予感が、次回作への興味と期待をいやでも盛り上げる。
「寿ぐ嫁首」三津田信三
三津田信三の「寿ぐ嫁首」(KADOKAWA刊)は、ホラーの趣向を凝らしたミステリと言うべきか? 同期の友人が嫁ぐことになり、女子学生の瞳星愛は旧家の婚礼に呼ばれるが、旧弊なしきたりの数々に驚愕する。屋敷神の嫁首様の祟りを避けるためだという面妖な儀式のさなか、迷宮のような社の奥で、奇怪な死体が見つかる。
作者の真骨頂である怪奇と本格推理のせめぎ合いが読みどころだ。童謡の「花いちもんめ」に擬えた唄の歌詞が不気味な雰囲気をかもすなか、密室状況下で起きた不可解な見立て殺人をめぐり、名探偵・刀城言耶の不在を預かる怪異民俗学研究室(怪民研)の若手コンビが、怪異の数々に対峙する。不意打ちのように読者を襲う画竜点睛の一撃が、心胆を寒からしめる効果を上げている。


