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2025.08.19 11:00

【ウリケ・シェーデ×NEC】日本企業の「静かなる再興」——価値を見える化するNECの挑戦

多くの人が気づかぬうちに、日本の大手企業は力強い再生を遂げている──。その姿を「静かなる再興」と呼び、国際的に評価するのは、『シン・日本の経営』著者のウリケ・シェーデ教授だ。 

しかし一方で、この日本企業の再生は"見えにくさ"が課題となっている。この課題に「ブランド価値の見える化」という新たなアプローチで挑むのが、NECだ。この"新たな羅針盤"は、日本企業全体に光を当てることができるのか。Forbes JAPAN Web編集長・谷本有香がファシリテーターを務め、シェーデ教授とNECでブランドエクイティエグゼクティブを務める角谷貴士が語り合った。


なぜ日本企業は強みを過小評価しがちなのか

谷本有香(以下、谷本):本日は日本企業の真の実力とその可視化の必要性について、おふたりにうかがいたいと思います。シェーデ先生の著書『シン・日本の経営』(日経BP)では、日本企業の力強い再生が描かれています。しかし日本国内では、「失われた30年」という言葉に象徴されるように、悲観的な論調が主流です。私たち日本人は、実は自国の強みを過小評価しがちなのでしょうか? 

ウリケ・シェーデ(以下、シェーデ):おっしゃる通りですね。私自身、長く日本企業を研究していますが、特に今注目しているのが「なぜ日本人は自国に対してこれほどネガティブなのか」という点です。外から見ると素晴らしい強みをたくさん持っているのに、国内では悲観的な見方が根強い。本当にもったいないことだと思います。

実は、産業構造の変化により日本の強さがより「見えにくくなった」だけで、強さは確実に内部にあるのです。例えば、バブル崩壊後、多くの日本企業は力強い「静かなる再興」を遂げてきました。かつてのBtoC主戦場から、他社には真似のできない高度な部品や素材、ソフトウェアといったBtoB領域へとビジネスの軸足を移したのです。AppleのiPhoneに、かつての「ケータイ」を支えた日本のサプライヤーの部品が使われているのも、その象徴的な例でしょう。

これは、声高にアピールするのではなく、技術力で世界を動かすという、まさに「静かなリーダーシップ」と呼べるのではないかと私は考えています。しかし問題は、この再生が消費者から「見えにくい」こと。リビングから日系メーカーのテレビが消え、日系メーカーのPCがAppleに置き換わったのを見て、「日本は負けた」と感じてしまうのです。

角谷貴士(以下、角谷):NECも事業ポートフォリオを柔軟に転換しており、時代の変化に合わせながら社会のミッションクリティカルをITサービス、社会インフラ両面で支える社会価値創造企業であり続けています。社会を支える存在としての強みとその技術力を、見えないところで発揮しているわけですが、おっしゃる通り、過去BtoC事業を進めていた時代と比べますと、強さが見えにくくなっていることは否めません。 

このように社会に価値を生み出す重要な役割を担っている一方で、その強みが正しく伝わらなければ、これまで培ってきたブランドの価値は薄れていってしまうのではないか、という危機感も持っています。

「タイトな文化」は弱点なのか?

谷本:こうした変化が見えにくくなっていると同時に、日本企業は自分たちの価値を「表現」する方法についても考えていかなければならない局面を迎えているのではないかと思います。その話に入っていく前に、ウリケ先生が指摘されている、日本の「タイトな文化」という視点について改めてうかがえますでしょうか。この視点は、日本企業の特性を理解する上で、重要な視点ではないかと。 

シェーデ:その工程や品質管理のルールを厳格に守る日本の「タイトな文化」は、ものづくりには非常に合っていました。精度や品質の高いモノやサービスを提供し続ける上で有効に働いてきたのです。事実、日本の自動車メーカーや食品メーカー、化学メーカーが国際競争力の高い製品を生み出し続けてきたのは、タイトなものづくりが求められる領域だからでしょう。 

一方で、ソフトウェア・サービスの時代には、アメリカでは「MVP(Minimum Viable Product:実用最小限の製品)」でまず市場に出すところを、日本では「Maximum Value Product(最大価値製品)」を目指す傾向があります。そのこだわりが信頼を生む一方で、スピード感を損なうこともある。このバランスが難しいのです。 

谷本:産業構造が急速に変わっていく中で、日本企業の強みを「見えやすく」していくためには何が必要なのでしょうか。 

 シェーデ:企業ブランドの具体的な「物語」が必要だと思います。自社が何を提供できるのか、どのような価値を社会に届けているのかを、説得力のあるストーリーとして語ることです。日本企業には素晴らしい技術と価値があるのに、それを魅力的な物語として社会に伝えることが課題となっています。

谷本:まさにその見えない資産を可視化し、新たな「物語」を社会に提示しようというのが、NECのBrand Equity Management (以下、BEM)の挑戦ですね。

角谷:ありがとうございます。経営層からは「ブランドが、企業価値にどれだけ貢献しているのか?」と常に問われています。「ブランドが利益と利益成長にどのように貢献しているかを示して欲しい」とも。 

一般的に言われていることですが、製造業を中心として高度経済成長を支えてきた日本において、企業価値は、長らく有形資産を中心に評価されてきました。例えば、工場や設備などの目に見える資産がどれだけ利益を生み出すかが企業価値の基準となっていたのです。しかし時代の変化とともに、現在では企業の提供価値の源泉が、ブランド、顧客との関係性、データなどの無形資産に移っています。これらは目に見えないものの、顧客の信頼や期待を生む物語となり、企業の持続的な成長と期待収益へとつながっています。

そこで私たちは、ブランドを正しく評価できる見えるものさしが必要であると考えました。

ブランドは将来期待の体験価値、つまりステークホルダーが期待する「物語」だと考えています。この物語を描く上で、ブランドの現在地と将来の期待を見える化することが、BEMの出発点となりました。ブランドという目に見えない資産によって生み出される将来の期待収益を、あえて「見えるものさし」で測ることに挑戦したのです。

ブランドを「科学」する——NECが開発した新たな羅針盤

谷本:無形資産を「見えるものさし」で測るとは、具体的にどのようなアプローチなのでしょうか。

角谷:我々は2つのアプローチを取りました。ひとつは、自社のブランドから導かれる資産価値を金額で算出することです。プロフェッショナルファームのデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社とともに、M&Aで用いられるPPA(Purchase Price Allocation)という会計アプローチを応用し、公開財務データのみを使って、ブランドによって生み出される将来期待収益を独自に算出しました。つまり、目に見えないブランドを金銭価値で見える化しました。

もうひとつは、体験価値を測るアプローチです。ブランドに対する顧客の評価をインデックスという形で可視化したBMI(Brand Mass Index)という指標を独自に開発しました。これは、いわばブランドの「健康診断」のようなものです。企業ブランド調査の結果をもとに、「親密度」「推奨度」「社会価値創造イメージ」といった複数の項目をスコア化するとともに総合スコアを出し、競合他社と比較しながら自社の現在地を定量的に把握できるようにしています。 

谷本:社内の反応はいかがでしたか?

角谷:今まで見たことのない数字やスコアであったこともあり、ポジティブ・ネガティブの両面からさまざまなコメントが寄せられました。ただここで重要なのは、数字やスコアの精度以上に、今まで見えなかったブランドの価値を数字やスコアを用いて見える化したことで、ブランドに「価値があるのか」といった議論から、ブランドを「どのように価値につなげるか」のように議論の質が変わってきたことです。これは大きな進歩だと実感しています。 

シェーデ:素晴らしいアプローチです。数値の厳密さ以上に、皆が同じものを見て議論できることに価値があります。

自社の強みに自信を持ち、信頼の物語を語れ

谷本:シェーデ先生、NECのBEMのようなアプローチは、日本企業が自らの強みを内外に伝え、「静かなる再興」をさらに加速させる上で、どのようなインパクトを持つ可能性があるとお考えですか?

シェーデ:非常に大きなインパクトを持つと思います。これが「再興」の起爆剤になり得るのではないでしょうか。

谷本:まずは自社の強みや弱みを理解し、伸ばす/改善するという選択肢を取れるようになることが、重要な機会になるということですね。

シェーデ:このような時代に、企業にとって最も重要な資産は「信頼(トラスト)」です。日本の「タイトな文化」が育んできた品質へのこだわりや誠実さは、この「信頼」を築く上で大きな強みとなるのではないでしょうか。

例えばAIやデジタル技術が社会に急速に浸透するなかで、人々の間には新たな不安も生まれています。アメリカでは素早くクラウドに移行した結果、多くのデータ漏洩が起きている状況で、便利になった一方で、不信感が生まれているのも事実。一方で、日本製品はこうした問題を最小限に抑えられるよう厳格に品質が管理されています。日本企業は今こそこうした「信頼」のカードを切るべき時だと、私は思います。 

谷本:NECの強みも、まさにその「信頼」にありますね。

角谷:はい。おかげさまで独自のアンケート調査でも弊社への信頼は高く評価いただいています。例えば空港の顔認証ゲートや、国の経済安全保障に関わる領域での事業貢献など、社会の「安全・安心」を支える事業が我々の根幹であり、弊社のコアテクノロジーであるAIと、その背後にあるセキュリティ技術で支えていきます。

一方で、これらテクノロジーを活用して社会価値を生み出していくためには、すべてのステークホルダーからの一層の信頼を得ていかなければ実装できません。企業価値は金銭価値で表現されますが、その企業価値を支える企業ブランドの「信頼」はお金では買えません。

BEMは客観データによって自社の現在地を見える化する取り組みと併せて、これから先の未来に求められる「信頼」についても分析し、市場競争力向上に繋げようとしています。

シェーデ:NECの BEMは、その見えない企業ブランドの信頼を「見えるものさし」で測り、説得力のある物語に変換していく試みと理解しました。自分たちの強みがどこにあるのかをデータで把握し、それをどう社会に価値を提供し、企業価値につなげていくのかを語る。このプロセス自体が企業全体の力を強くし、日本企業の強さを「見えやすく」していくだろうと、私も期待しています。

谷本:最後に、価値創造の道を歩む多くの日本のリーダーたちに向けて、エールをお願いします。

角谷:これまで見えていなかった、本来価値あるものを「見える化」すること自体が価値であり、そこからステークホルダーとの信頼の物語が始まります。自社のあるべき未来像と現在地とのギャップを客観的に把握し、次の行動につなげていくことで、市場や顧客、社会の期待と信頼を勝ち得る企業ブランドになると信じて活動していきます。 

シェーデ:今、世界は日本に注目しています。世界の株式市場、M&A、観光客、そして世界的な需要を見ても、日本にとって今は絶好の機会です。日本の持つ潜在能力、特に「信頼性」という強みは、これからの不確実な時代において、他国にはない大きなアドバンテージです。

困難な時代は、見方を変えれば大きなチャンスの時でもあります。日本のリーダーたちには、自社の歴史と強みに自信を持ち、恐れずに未来への投資を続けてほしい。そして、自分たちの素晴らしい「物語」を世界に語ってほしいと願っています。 

日本電気株式会社
https://jpn.nec.com/

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(註1)NECのPurpose:NECは、安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現を目指します。


ウリケ・シェーデ◎米カリフォルニア大学サンディエゴ校グローバル政策・戦略大学院教授。日本を対象とした企業戦略、組織論、金融市場、企業再編、起業論などが研究領域。一橋大学経済研究所、日本銀行などで研究員・客員教授を歴任。9年以上の日本在住経験を持つ。著書に『The Business Reinvention of Japan』(第37回大平正芳記念賞受賞、日本語版:『再興 THE KAISHA』、日本経済新聞出版)、『シン・日本の経営 悲観バイアスを排す』(日経BP 日本経済新聞出版)など。ドイツ出身。

すみや・たかし◎NEC 経営企画・サステナビリティ推進部門 ブランドエクイティエグゼクティブ。米国マサチューセッツ大学 経営学修士(MBA)。知財・無形資産経営フォーラム 幹事 第二分科会長(ブランド戦略)。ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社(現ソニー株式会社)にてスマートフォン「XPERIA」の商品企画業務を統括。2020年NEC入社。コーポレートデザイン本部長代理としてデザイン経営を推進。現在はブランドエクイティアジェンダをリードし、社会と企業の持続的成長を支える企業ブランドのあり方について多角的に分析している。

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