経営・戦略

2025.08.07 12:00

オラクル創業者親子の裏で「新生パラマウント」を牛耳る、ビリオネア投資家の素顔

ジェリー・カルディナーレ(Photo by Claudio Villa/AC Milan via Getty Images)

レッドバード設立とパラマウントへの巨額投資

その1年後の2014年に、カルディナーレはレッドバードを設立した。ゴールドマン時代に知り合った匿名の富裕層の投資家たちから6億6500万ドル(約977億5500万円)を初回ファンドとして調達。さらに、以前から関係のあったオンタリオ州教員年金基金によるアンカー投資も受けた。

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レッドバードは2020年に、スカイダンスの2億7500万ドル(約404億2500万円)の資金調達を主導して、2位の投資家に浮上した。さらに、2022年にも40億ドル(約5880億円)の評価額で4億ドル(約588億円)を追加出資した。今回のパラマウントの買収に充てる18億ドル(約2646億円)の現金拠出は、レッドバードの運用資産全体の約15%に相当する。

巨大なリスクと可能性、新生パラマウントが直面する課題

パラマウントへの投資は大きな利益をもたらす可能性があるが、新体制下のパラマウントは数多くの課題に直面しているためリスクも大きい。例えば、地上波テレビの衰退、配信プラットフォーム間の激しい競争、142億ドル(約2.1兆円)に及ぶ長期負債、さらにはトランプ大統領への譲歩と受け止められかねない動きに対する視聴者の反発だ。

「この投資はレッドバードのポートフォリオ全体を圧迫しかねない。パラマウントの立て直しには膨大な労力が必要だ」と、メインストリート・アドバイザーズ創業者のポール・ワクターは今年初め、ハーバード・ビジネス・レビューのレッドバードに関するケーススタディで語っていた(ただし、ワクターは「経営陣は賢明かつ非常に意欲的だから、この投資は成功すると信じている」とも述べていた)。

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「レッドバード流」のテコ入れにうってつけの存在

一方カルディナーレは、新生パラマウントを「レッドバード流」のテコ入れにうってつけの存在と見ている。なぜなら同社は、1200本を超える映画作品に加えて、2400本の映画の配給権、そして米国視聴者の記憶に刻まれたテレビネットワーク群を擁するからだ。

「我々レッドバードがやっているのは、世界水準の知的財産(IP)をどう収益化するかを探ることだ。パラマウントは100年以上の歴史を持ち、非常に質の高い知的財産を抱えている」。カルディナーレは、昨年スカイダンスとパラマウントの取引の発表後に出演したポッドキャスト番組The Townでそう明かした。「我々は、ただ取引をまとめることを目的とするディール屋ではないし、何かを買うためだけに動くプライベートエクイティ投資家でもない」。

自らの評判を懸けて立て直しに臨む投資家

そして、投資家が買収額に目を向ける一方で、メディアの批評家や視聴者の関心は別の点にある。彼らが注視しているのは、スカイダンスが連邦通信委員会(FCC)から求められた以下2つのコミットメントをどう実行に移すかだ。

・新会社の番組が、政治的・思想的スペクトラム全体にわたる多様な視点を体現すること

・ニュースメディアに対する全米視聴者の信頼を損なってきた、偏向を排除する施策を採用すること

また、新生パラマウントが一部の懸念ほど「トランプ寄り」にならないと見られる理由もある。デービッド・エリソンは、かつてバイデン大統領の再選キャンペーンに約100万ドル(約1億4700万円)を献金しており、カルディナーレも大口献金者ではないが、これまで民主党と共和党の両方に献金してきたからだ。

しかし、いずれにせよ、カルディナーレが気にすべきは政治だけではない。巨額の負債と構造的逆風に直面する新生パラマウントには、この業界を理解している投資家、しかも自らの評判を懸けて立て直しに臨む投資家が必要だ。カルディナーレが直面する試練は、この取引が成立した瞬間から始まる。その時は、もう目前に迫っている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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