生物のように、会社にも「寿命」がある。AI時代の到来により働きかたや仕事の在りかたが変われば、会社や業界も同じように変転するかもしれない。そうした時代にあって、起業家や経営者はどのような視座で自社を率いるべきだろうか?
米データ管理企業「Rubrik(ルーブリック)」のBipul Sinha(ビプル・シンハ;写真)CEOは、「永続的な組織を創る」ことを目的に同社を立ち上げた。カギは「市場と顧客を愛し続けること」にあるという。その哲学は、彼が歩んできたユニークなキャリアを通じて培ってきたものでもある。
シンハは、インド工科大学(IIT)カラグプル校で電気工学の学士号、米ペンシルベニア大学ウォートン・スクールでMBAを取得し、オラクルやIBMなどでエンジニアとして働いた経験をもつ。その後、米ベンチャー投資会社のBlumberg CapitalやLightspeedで働き、NutanixやHootsuiteに出資してきた。
そして2014年にRubrikを起業。データ保護とランサムウェア対策に強みをもつ同社は、さまざまな環境のデータを一元的に保護する多層的なセキュリティを提供し、大手企業を含む6000社以上の顧客を抱える。創業10年を迎えた2024年4月には、ニューヨーク証券取引所(NYSE)への上場を果たしている。
起業に必要な「独自の視点」とは何か? ビジネスアイデアが「非コンセンサス」であるべき理由とは。そして「100年企業」を目指すことが、AIをはじめとしたテクノロジーや市場のトレンドに振り回れされることなく、会社を進化し続けさせられるカギかもしれない訳とは。シンハとのインタビューから、「会社を永続させる」に当たって考えるべきことのヒントが見つかるはずだ。
━━IITで学び、ウォートン・スクールでMBA、オラクルやIBMでエンジニアとして歩まれたのち、投資家に転身。そして、Rubrikを創業しています。起業するまでの経緯について振り返ってください。
ビプル・シンハ(以下、シンハ): 私はインドで育ちました。父は1960年代に製薬会社を起業しましたが、事業はうまくいきませんでした。少年時代はとても貧しく、食うに困るほどの苦労を経験しています。しかし、野心家だった父は「おまえたちは何にでもなれる。貧しさから抜け出し、大きな夢を叶えるには教育が不可欠だ」と、常に私たちに言い聞かせていました。
その言葉通り、私はインド工科大学(IIT)で電気工学を学び、卒業後に渡米しました。これは純粋に経済的な理由からです。私が一家の大黒柱として、家族を貧困から救うためには、一日も早く大きなお金を稼ぐ必要があったのです。いわば経済的な決断でした。しかし、アメリカに到着した瞬間、「ここが自分の居場所だ」と直感したのを覚えています。「この国ならやっていける!」と。そして、アメリカも私を受け入れてくれたように感じました。



