━━Annapurnaは社内の「ハッカソン(社内で行う短期集中型のアイデア開発イベント)」で生まれたそうですが、ここでRubrikの企業文化についても伺えれば。これからのAI時代、どのような働き方になるとお考えですか? 大きな変化はあり得るのでしょうか。それとも本質的には変わらないのでしょうか?
シンハ: 従業員が互いに協力し合える企業文化の文脈をどのように作り出すかは、どの会社にとって最も重要なことです。Rubrikを創業した時、私たちは従業員が互いに協力するためのフレームワークとして「RIVET」を開発しました(編集部註:創業者たちが一緒に働きたい人の5つの資質である、(1)Relentlessness<意思の強さ>、(2)Integrity<誠実さ>、(3)Velocity<速さ>、(4)Excellence<卓越性>、(5)Transparency<透明性>の頭文字からなる企業文化)。創業者がその場にいなくても、本社から遠い世界各国で製品を販売し、顧客と交流し、サービスを提供しているからです。
従業員が当事者意識をもてるようにするにはどうすればいいのか? 互いに嘘をついたり、お客様に対して嘘をついたりしないようにするにはどうすればいいのか? どうやってそれを担保するのか? 「文化的な文脈」が必要なのです。テクノロジーは、文化的な文脈とは異なります。テクノロジーは来ては去っていきます。今日はAIですが、明日は何か別のものかもしれません。会社にとって唯一不変の、不変の質は「文化的な文脈」です。それが互いに協力するためのフレームワークだからです。
Rubrikの文化の本質は、社員一人ひとりがキャリアの可能性を最大限に高められる、信頼に基づいた仕組みにあります。ですから、従業員が自分自身を表現できるように努めています。意見の対立は歓迎しますが、感情的な対立はしません。議論の文化、異議の文化があります。
異論は、決して人格攻撃ではありません。私たちが徹底的にぶつけ合うのは、あくまでお互いのアイデアです。私たちは、あらゆる声に耳を傾けるよう努めます。もちろん、すべての意見を採用するわけではありません。完全な合議制では、組織として機能しなくなってしまうからです。その代わり、全員が当事者意識をもって議論に参加することは徹底します。あらゆる視点に、私たちは耳を傾けるのです。
━━少なくとも、すべてのアイデアに耳を傾けた上で、最終的な意思決定をされるのですね。
シンハ: 意思決定を下すに当たって、同意できないアイデアもあることでしょう。でも、その前に必ずすべてのアイデアを聞くようにします。人生では、不確実な状況でこそ意思決定が求められます。では、その不確実性はどこから来るのか。それは未知の事柄、つまり「死角」があるからです。その死角を可能な限り減らす唯一の方法が、多様な視点に耳を傾けることなのです。
今、AIの時代が到来し、私たちのチームもコーディングからマーケティング、カスタマーサービスに至るまで、あらゆる場面でAIを活用しています。さまざまな側面でAIを取り入れていますが、AI自体は本質ではありません。重要なのは、AIというツールを使って「個人がプロとして最高の高みを目指し、自分自身を表現できるプラットフォームをいかに創造するか」ということなのです。


