━━Nutanixのほかにも、Hootsuite(フートスイート)でも初期投資家でしたね。
シンハ:Hootsuiteでは最初の投資家となり、Snapchat(スナップチャット;現Snap)への投資にも携わりました。株式公開を果たしたBraze(ブレイズ)では、創業チームの立ち上げを支援しています。幸運にも多くの企業が大きく成長していく姿を目の当たりにしてきましたよ。
━━出資したスタートアップにどのようなポテンシャルを見出し、その過程で得たインサイトをご自身の起業で実践してみたいと思われたのでしょうか?
シンハ: ベンチャー投資をしていた頃、私が常に探していたのは、起業家が市場にもたらす「Unique Perspective(独自の視点)」でした。この「独自の視点」こそが、何よりも重要だったのです。
例えば、Snapchatの創業者と初めて会ったとき、彼らはこう話しました。「昔は、誰もが電話でコミュニケーションをとっていた。友だちとどんなに話しても記録は残らなかった。足跡や履歴といったものはいっさい存在しなかった。それが、現代のソーシャルメディアでは、友人と話したやり取りがすべて記録として残ってしまう。どうすれば記録の残らないソーシャルメディア体験を創り出せるか?」。
これこそが「独自の視点」であり、ユニークな切り口です。私が探し求めているのは、まさにこのようなものでした。市場の常識とはかけ離れていても、何か際立ったもの。Snapchatへの投資を主導したパートナーと私は、同社が将来どうなるか、多くの議論を重ねました。それでもなお、私たちはそのユニークな視点に強く惹かれたのです。
Nutanixも同様です。彼らは「ストレージとコンピューティングを、単一のソフトウェアに統合する」と宣言しました。それまで誰も成し得なかったことであり、これもまた「独自の視点」でした。
ビジネスとは、常に大勢の意見に逆張りし、市場で独自の視点を貫くことです。私の経験則では、もし自分のアイデアに70%の人が反対し、賛成してくれるのが30%の熱狂的な支持者だけなら、それは良いアイデアと言えるでしょう。逆に、100%の人が賛成するようなアイデアでは、お金儲けはできません。
アイデアは「非コンセンサス(共通認識)」でなければならないのです。なぜなら、周りが自分のアイデアを信じてくれないという状況が、他社との差別化を推し進め、より大きな価値を創造するための時間を与えてくれるからです。それこそが、市場における自分だけのバリュー・プロポジション(価値提案)となるのです。


