小規模な個人開発から世界へ。体験の品質を磨いた家計簿アプリ
モバイルアプリ市場の最大手であるApp Storeには2025年時点で180万本を超えるアプリが配信されている。この巨大な市場で、個人の力で成功を収めるデベロッパも数多くいる。株式会社マネライズ代表取締役の濱北哲郎氏もその中の一人だ。
濱北氏は高校中退後、複数の職を経てウェブエンジニアに転身。仕事の傍らiOSアプリ開発を始め、わずか2年で独立した経歴を持つ。代表作である人気の家計簿アプリ「家計簿 シンプルマネー」は、「保険外交員時代にお金の知識が不足している人が多いと感じた経験から、誰でも簡単にお金の理解を深められるアプリを作りたい」という濱北氏の思いから生まれた。
現在、濱北氏は企画、開発、デザイン、マーケティング、カスタマーサポートまですべてを1人でこなしている。「品質と開発スピード」を維持するため、アップルが提供する公式開発ツールを積極的に活用しているという。特に開発プラットフォーム「SwiftUI」により、1つのコードでiPhone、iPad、Macといった複数のOS向けアプリを効率的に開発できる点を評価している。
家計簿という極めてセンシティブな個人情報を扱うからこそ、ユーザーの安全とプライバシーを強固に守るApp Storeとアップルデバイスの技術に、開発者として厚い信頼を寄せていると濱北氏は語る。また、自身のアプリが180万本の中で埋もれないよう、アップルが新たに発表した「アプリタグ」のような発見性を高める仕組みにも期待を寄せる。
濱北氏はApp Storeのユーザーについて、「デザインやソフトウェアの使いやすさへのこだわりが強く、iPadやMacなど複数のアップル製品を持つ可能性が高い」と分析する。そのためアップル製品にふさわしい上質なユーザー体験を設計し、iPhone以外のデバイスにもアプリによる体験を最適化することがユーザー拡大の鍵だと濱北氏は捉える。
収益性に関しても「広告モデルより課金ビジネスモデルと相性が良い」と指摘する。マルチデバイス対応が付加価値となり、課金への納得感を高めることができるのはApp Storeならではのメリットなのかもしれない。「iPhone、iPad、Macへの『縦展開』は、私たちのような小規模デベロッパが差別化できる要素」と語る濱北氏は、次期OSで導入される新デザイン「Liquid Glass」がもたらす統一された体験にも期待を膨らませている。


