お茶の葉を栽培、収穫して緑茶などを製造販売するお茶メーカー(製茶業者)の倒産、休廃業が過去最多のペースで増えている。世は抹茶ブームでお茶の需要が大きく増えているはずなのに、なぜそんなことになっているのか。
帝国データバンクの調べでは、2025年の1月から7月にかけて負債1000万円以上の法的整理による倒産、休業、廃業、解散となった製茶業者の数は累計で11件。このままでは、年間の倒産休廃業件数は過去最多になる見通しだ。

日本のスイーツやお菓子では抹茶を使ったものが流行っているが、抹茶ブームは世界的な傾向だという。そのため抹茶の需要が急増し、前年度から増益となった製茶業者は51.2%と過去20年間で最高となった。自社で栽培から加工までを行える業者は、このブームで抹茶の増産に切り替え大きな収益をあげた。
その一方で、農家から茶葉を買い付けている業者は、茶葉の価格高騰、光熱費の高騰、さらに農家が抹茶の原料になる碾茶の栽培にシフトしたことから通常の茶葉も品薄となり仕入れ価格が上昇した。また以前からの日本人の日本茶離れもあり、約18%が減収、約30%が赤字と業績が悪化した。
碾茶が手に入る業者とそうでない業者との二極化が進んだ形だ。碾茶とは、収穫前に直射日光を遮る特別な栽培方法で育てられたお茶の新芽だけを摘み取ったものだ。それを蒸してから葉脈などを取り除き、乾燥させて石臼で挽いて抹茶が作られる。元来、最高級品である抹茶に業界全体が軸足を移すとなると、歪んだ状態に見えてくる。
ブームはいずれ終わる。「ブランド力のほか、変化する消費者ニーズに対応した商品開発力、加工技術力などで高付加価値な茶葉を生産できる企業と、そうでない企業における格差の拡大が製茶業界全体でより加速する可能性がある」と帝国データバンクは懸念を示している。



