フィリップ モリス インターナショナル(PMI)は、「煙のない社会」の実現を掲げ、紙巻たばこをすべて「煙の出ない製品」へ切り替えるという、たばこ業界の変革に挑んでいる。公衆衛生の観点から社会や多様なステークホルダーに意義があり、科学的知見に基づき開発された製品を、今後もたばこを使い続ける20歳以上の成人喫煙者に提供することがPMIの使命だと考えているのだ。
その日本法人であるフィリップ モリス ジャパン(PMJ)には、2024年12月時点で約1,600名が在籍し、提携する「煙のない施設」は2,000に上る。世界に先駆けて日本で加熱式たばこ市場を切り拓いてから10年。グローバルなビジョンと日本市場での経験を背景に、同社のマーケティングチームはいかにブランド価値を伝え、20歳以上の喫煙者との対話を築いてきたのか。現場で活躍する3人のマーケターに話を聞いた。
ブランドチームの役目はメッセージの核を生み出すこと
「モータースポーツや音楽フェス、ナイトクラブなど、公私ともに好きなエンタメの現場にイベントプロモーションを通じて関わりたいと考え、 映画会社のマーケティング部門からPMJに転身しました」
そう語るのは同社のマーケティングやコマーシャル組織を行き渡る林 征吾(以下、林)だ。18年前の入社当初は特定の銘柄を訴求していたが、加熱式デバイスの登場を機に、仕事の質は大きく変化していったという。
「ライターで火をつける紙巻きという形態の嗜好品から、加熱式という技術的な製品に移行することで、見せ方も“印象づけ”から“理解を促す”方向へとシフトしました。そこから約10年、製品の選択肢としての認知が徐々に広がってきたことを受けて、ここ数年は同業他社製品との差異を伝えるブランディングにも注力しています」
提供する製品の精度や設計思想に誇りをもっているからこそ、ブランド成長にかけるやりがいが生まれるのだと語る。
「ブランドを育てるには、まず社内での認識の統一が不可欠です。私たちブランドチームの役割は、20歳以上の喫煙者に向けたメッセージやビジュアル、コミュニケーションの核となる『ブランドのフレームワーク』を、スイス本社の経営・統括本部と連携して策定することです。
そのフレームワークをもとに、新製品のコミュニケーションビジュアルや映像、紹介手法まで細部にわたって設計します。デバイス本体だけでなく、使用するたばこスティックについても、どう位置付けるのか、どんな言葉で20歳以上の喫煙者に伝えるか、を丁寧に構築しています。
製品の特性上、すべてを直接的に語れるわけではありませんが、限定モデル発売時も、ブランドの基盤から施策までを一貫して設計し、代理店や関係各所と連携して展開していく──それこそが、この仕事の醍醐味です」
ビジョンに共感、マーケターとしての仕事の面白さに惹かれて入社
一方、広告代理店から出向し、大手自動車メーカーのマーケティング業務に携わっていた上り濵有美子(以下、上り濵)は、当初、非喫煙者である自分にはPMJは縁のない業界だと感じていたという。一度は入社の誘いを断ったが、以前の同僚がPMJに勤めていると知り、改めて話を聞いたことで、強く興味を惹かれた。
「出向先で、どんなに知名度の高いブランドであっても、マーケティング部門が社内で必ずしも重視されていないことを実感しました。転職するなら、もっとマーケティングが尊重される企業で働きたいという漠然とした思いがありました。
また、代理店で経験を積むなかで、自分にとって“好きなブランド”と“やりがいのあるブランド”は必ずしも一致しないという現実にも直面していました。そうしたなかで、“煙のない社会へ”というグローバル・ビジョンを掲げ、マーケティングに力を入れているPMJでブランドづくりに関われることに、大きな魅力を感じたのです」
元同僚の話を通じて「仕事をするなら、意味のあることに携わりたい」という思いが強まり、喫煙という現実に向き合いながら、そのなかで少しでもより良い提案を届けようとする姿勢に共感し、PMJへの転職を決意したのだという。
プロジェクトのダイナミックな進め方、“人”の良さに惹かれて
広告代理店時代に10年間にわたりPMJを担当していた井上華代(以下、井上)は、「新製品が出ます。どんな広告にしましょうか?」という白紙の段階から、PMJの社員や広告代理店のクリエイティブ、プランナーたちとともに広告を企画・制作していたという。
通常、広告代理店の仕事はクライアントの「ブランドをこう伝えたい」という明確な意図から始まることが多い。しかしPMJでは、そうした完成された方針ではなく、もっと上流のフェーズから共に考えるスタイルだった。
「最初から話し合いに加わり、どうすればブランドをもっと好きになってもらえるかを一緒に考える。そのプロジェクトのダイナミックな進め方や、関わる“人”の魅力に惹かれていき、次第に『私もPMJで働きたい』と思うようになっていきました」
その後、井上は実際にPMJへ転職。デジタル部門、セールス部門を経て、念願のマーケティング部門に加わった。現在はブランドの魅力が20歳以上の喫煙者にしっかり伝わり、感謝や好意の声が届く機会も増え、日々、大きなやりがいを感じているという。
「できること」の先に挑み、成長をつかむ環境
井上はさらに、PMJの職場環境についても言及した。
「マーケティングチームは特に活気に満ちていて、スピード感があります。また、30カ国以上の人々と働く環境は、まさにダイバーシティそのもの。日々、価値観やマインドセットの違いを実感します」
こうした環境においては、多様な考え方を柔軟に受け入れ、吸収する姿勢が不可欠だという。
「異なる視点を面白いと感じられる人でないと、大変に感じるかもしれません。ただ、それでもギスギスしないのは、PMJの人たちの人間性が温かいからだと思います」
また、PMJでは、社長やその他経営陣(統括本部長)に直接プレゼンする機会が頻繁にあり、成果を評価してもらえる仕組みも整っている。
そのプレゼン機会について、林が補足する。
「セールスなど他部門も交えたフォーラムが定期的に開催され、プロジェクトの進捗報告や新製品発売後の振り返りなどを行います。プレゼンは原則20分。2カ月分の成果を簡潔に伝える必要があるため、プレゼン力は確実に鍛えられる環境です」
上り濵が言及するのは、PMJ独自のマトリックス型の組織編成だ。多くの社員はプロジェクトに複数参加し、複数の部署や専門分野を横断して働いているという。
「関わる人数も人種も多いので、チーム一丸となって気持ちよく働けるために、さまざまな配慮も必要です。チームはいわば大きな船。コミュニケーションを駆使して、力を集めてこそ動いていくものです。そうしたチーム意識は、他社に比べてかなり強いと思います」
ある意味そうした環境は試練でもあるが、楽しさでもあると井上は説明する。
「自分ができることだけをやっていても成長しません。できないことをどんどんやっていくことで、自分の能力、技術力、実行力、が広がっていく。成長こそが仕事のやりがいにつながるのではないでしょうか」
井上が手応えを感じた取り組みのひとつが、近年展開されたブランドエクスペリエンス・キャンペーンである。約10年ぶりに、製品の機能面だけでなくブランドの価値そのものを伝えることを目的とした施策であり、昨年日本で開始されたものだ。また喫煙を続ける成人喫煙者に対し、製品やブランドへの理解を促すことも目的としている。
このキャンペーンはすべての20歳以上の喫煙者を対象にしており、参加者は人とのつながりを通じて、自身の選択を見つめ直し、周囲とのコミュニケーションを促す機会が提供される。
「この取り組みによって、ブランドイメージは明確に数値で改善されました。すべての20歳以上の喫煙者に参加の門戸を開くことで、ターゲットを広げることができましたし、PMJの全チャネルを活用して、一貫したメッセージを20歳以上の喫煙者に届けることができたのが成果につながったと思います」
個人の裁量で可能な、自由度の高いワークスタイル
PMJの人事制度においては、異動が同一部署内にとどまらず、社員一人ひとりの中長期的なキャリアパスを見据えて設計されている。「希望する部署に行くには、まずこの部署で経験を積むとよい」といったアドバイスも多く、個々の成長を後押しする仕組みが根付いている。ブランド構築と同様に、長期的視点を重視するカルチャーが社内に浸透しており、社員がやりがいを感じやすい環境が整っているのだ。
では働き方そのものに自由度はあるのだろうか。上り濵が説明する。
「幼い子どもがいる家庭では、どうしても時間的な制約があります。週3日まで在宅勤務が可能で、物理的に会社にいる必要がない自由度の高いPMJのワークスタイルは、多くの親にとって子育てをしながら働きやすい環境だと思います。子どもを迎えに行くために外出して、戻ってきてから仕事を続けるといったことも自由にできます。
もちろんミーティングなどは調整してもらう必要がありますが、そうした行動は当然の権利と考える人が多く、とても理解があります。多忙な側面はあるものの、プライベートも仕事も楽しめる環境だと思います」
テクノロジーを超え、ブランドをつくっていくフェーズに
上り濵は、同社は今、もっともやりがいのある段階にきていると続ける。
「これまでの成長は、革新的なテクノロジーと製品が支えてきました。これからは、それをどう社会に位置づけていくか、“ブランド”をつくっていく新たなフェーズに入ってきています。グローバル企業であるがゆえの大きな規模と予算を使って、社会に新しい選択肢を提示できるのは、マーケターとして非常にチャレンジングな環境です」
林は、PMJが加熱式市場を日本で切り拓いた先駆者である一方、今後はその知見を世界に展開していく役割があると語る。
「PMJには、グローバル本社であるPMIの方針がありますが、日本市場の文化的な感受性や、丁寧なコミュニケーションの積み重ねから得た学びは、グローバル本社にも価値を提供できると感じています。だからこそ、ただ本社の方針に従うのではなく、自ら積極的に提案することも可能です。
PMJには役職に関係なく建設的な意見が歓迎される文化があり、新入社員であっても自らの意見に責任をもてば、しっかり耳を傾けてもらえます。グローバルな視点とスピード感を肌で感じながら働ける、非常に刺激的な環境だと思います」
フィリップ モリス ジャパンについて
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フィリップ モリス インターナショナル 公式Linkedin
林 征吾(はやし・せいご)◎映画会社でのマーケターを経て、2007年に入社。マーケティング部門でイベントプロモーションから始まり、マールボロブランドの担当を経て、加熱式デバイスを含むブランド戦略全般を統括。現在はHORECA(ホテル、レストラン、カフェ等)を担当するコマーシャルオペレーション所属。
上り濵有美子(あがりはま・ゆみこ)◎広告代理店に入社、大手自動車メーカーへの出向を経て、5年前にフィリップ モリス ジャパンに入社。非喫煙者の立場からも、会社のビジョンや製品の価値に共感し、マーケティングの専門性を生かして活躍している。 ブランドチームに所属。
井上華代(いのうえ・かよ)◎広告代理店で、フィリップ モリスの広告制作に携わった経験をもち、その後フィリップ モリス ジャパンに入社。デジタルチームを経て現在のブランドエクスペリエンス部門に。加熱式たばこ製品のローンチにも関わり、ブランド体験の創出に注力。 ブランドエクスペリエンスチームに所属。



