米国の成人の9割近くが食料品の価格にストレスを感じていることが、4日発表された世論調査結果により明らかになった。米国では食品価格が上昇を続けており、特に鶏肉や牛ひき肉、卵などが大幅に値上がりしている。
AP通信とNORC公共問題研究センターが実施した今回の世論調査では、食料品の価格を「大きなストレス要因」とした回答が53%、「小さなストレス要因」とした回答が33%だった。調査ではその他の経済的懸念についても聞いたが、食料品価格に対する不安があると答えた人は最も多かった。
その他の項目では、給与、居住費、貯蓄額、クレジットカードの支払い、医療費についても、一定以上のストレスを感じている人が過半数に上った。「大きなストレス要因」として挙げられた割合が食料品価格に次いで多かったのは居住費(47%)で、続いて貯蓄額(43%)、給与(43%)、医療費(42%)となった。
米労働統計局がまとめる消費者物価指数(CPI)によると、食品価格は2025年6月までの1年間で3%上昇し、上昇率はCPI全体のインフレ率2.7%を上回った。食料品は2.4%、外食は3.8%、それぞれ上昇。すべての食品カテゴリーで価格が上昇しており、肉類・鶏肉・魚介類・卵は5.6%(特に卵は27.3%の急騰)、ノンアルコール飲料は4.4%、果物・野菜は0.7%、シリアル・ベーカリー製品と乳製品はいずれも0.9%上昇した。
6つの主要食料品(オレンジジュース、卵、鶏むね肉、牛ひき肉、ベーコン、パン)を対象としたNBCニュースの価格調査によると、2025年7月までの1年間で最も価格上昇幅が高かったのは鶏むね肉で、1ポンド(約453グラム)当たり81セント上昇。牛ひき肉は1ポンド当たり67セント、卵は1ダース(12個)当たり64セント値上がりした。
上昇率は例年より高いのか?
ドナルド・トランプは昨年の大統領選で「物価を即座に引き下げる」と約束して当選を果たしたが、それでも食料品価格は上昇を続けている。ただ、3%という上昇率は、2022年(10.4%)や2021年(6.3%)を大幅に下回り、2023年(2.7%)や2024年(2.5%)とほぼ同水準だ。
関税でさらなる値上げも
米エール大学のシンクタンク「バジェット・ラボ」は、追加関税の導入によって食品価格はさらに約3%上昇すると試算。青果物は関税導入直後に約7%値上がりした後、長期的には3.6%上昇で安定する見通しだとしている。また、米加工品については、長期的に10.2%の値上がりを予想。さらに飲料、シリアル・穀物、砂糖、肉類、乳製品も値上がりするとした。
追加関税の対象にはバナナ、ビール、ワイン、チーズといった輸入食料品が含まれる。米シンクタンク「タックス・ファンデーション」によると、米国は2024年、約2210億ドル(約32兆6000億円)相当の食料品を輸入しており、その62%はメキシコ、カナダ、欧州連合(EU)、ブラジル、中国の5カ国・地域からのものだ。
トランプ大統領は、対メキシコ関税引き上げを90日間凍結することで同国と合意。EUに対しては、15%の関税を課すことで合意している。カナダからの輸入品のうち、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の対象外である品目については、関税が従来の25%から35%に引き上げられる予定だ。
また、トランプは自身の盟友であるブラジルのジャイール・ボルソナロ前大統領が現在裁判にかけられていることを理由に、同国に対して50%の関税を課すと発表。中国からの輸入品に対しては、平均で55%の関税を課している。



