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2025.08.09 11:15

AIが登山計画から事故リスクを予測。 新技術が示す登山の未来

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2023年の山岳遭難は3126件と過去最高を記録したという。そんな山の事故を少しでも減らそうと、上智大学の研究チームが登山計画の情報からリスクを予測するAIシステムを開発した。

上智大学大学院応用データサイエンス学位プログラムの佐藤多恵子氏と深澤佑介准教授による研究チームは、登山計画に記される情報(登山日、登山ルート、気象条件、人数、登山者の年代など)をAIに入力すると、登山の事故(滑落、転倒、疲労、道迷い)の4つのリスクを予測する手法を開発した。

研究チームは、2014年から2023年までの山岳事故データ2596件をAI(Googleの自然言語処理モデルBERT)に学習させ、4つのリスクの予測に関連する単語を抽出したところ、そこに時間帯、気象条件、山岳情報、人口統計情報が複合的に寄与していることがわかった。たとえば、「朝」や「穂高」は滑落リスクと強く関係し、「昼」や「八ヶ岳」は転倒リスクと関係するといった具合だ。

さらに、事故リスクを予測する際に重視するポイントも明らかになった。たとえば滑落リスクは「上級者」と「穂高」という言葉が重視された。難しい穂高に上級者が挑むことで滑落リスクが高まるということだ。また転倒リスクは、「朝」、「正午」、「女性」、「40-60代」が重視された。疲労リスクは「午後5時」、「午後10時」、「夜」といった時間的要素が重視された。道迷いは「夕方」、「夜」、「霧」、「雪」だった。

予測の成績は、機械学習モデルの3つの評価指標である正解率、適合率、再現率ともに0.57±0.02(6割弱)と、そこそこの数値となった。とくに転倒と道迷いにおいては適合率と再現率が6割を超えている。

この研究は「自然言語処理の演習でBERTを活用した際に、登山に関するテキストデータでの遭難リスク予測の可能性に気づいたこと、高尾山での登山体験で遭難事故の多さを実感したこと」から始まったという。この技術は、近年普及してきた登山用のアプリやサービスに応用することで安全性の向上に寄与できるとのこと。登山計画を提出した段階で事故の可能性を具体的に把握できるため、それに合わせて装備を整えたり、計画を変更したりできる。さらに、登山以外の日常生活のリスク予測への応用も期待されると研究チームは話している。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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