米国務省は、外国人の不法滞在防止策として、一部の国からの観光・商用ビザ申請者に対し最大1万5000ドル(約220万円)の保証金を課す方針を発表した。トランプ政権はかねて、外国人の入国要件厳格化を進めており、今回の措置もその一環となる。
米国務省は、連邦官報に5日掲載される予定の通知を公表。一部の国からの渡航者に対して、ビザ申請時に5000ドル、1万ドル、または1万5000ドルの保証金支払いを義務化する12カ月間の試験プログラムを実施することを明らかにした。
対象は、商用・観光ビザ(B-1/B-2)申請者のうち、審査・身元確認の情報が不十分で不法滞在率が高い国からの渡航者とされている。具体的な対象国や、滞在終了後に保証金を返金する方法は記載されていない。
同プログラムは、居住義務のない「投資による市民権」制度を採用している国々にも適用される。こうした制度は、カリブ海地域、欧州、中東諸国の一部で施行されている。米旅行業協会(USTA)のエリック・ハンセン政府関係担当上級副社長は「影響を受ける申請は約2000件にとどまるとみられ、米国への渡航者数の少ない少数の国に限定されるだろう」との見解を示している。
米議会は先月、2026年から大半の非移民ビザ申請者に対して250ドル(約3万7000円)の「ビザ・インテグリティ料金」を課すことを決定していた。ハンセンは、最も懸念すべきはこのビザ・インテグリティ料金だと説明。導入により米国のビザ申請費用は世界最高水準になるとした上で、「国家安全保障の優先事項と、国際観光がもたらす大きな経済的価値の両方を反映したビザ政策が不可欠だ」と強調した。同協会のジェフ・フリーマン会長も「合法的な外国人観光客を対象とした手数料のつり上げは、米国が輸出する最大のサービスの一つである国際旅行消費に対して自ら関税を課すようなものだ」と厳しく非難している。
世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)が184カ国を対象に行った調査では、米国は2025年に外国人観光客による消費額の減少が予測される唯一の国となった。この背景には、外国人が入国する際の要件の厳格化や費用のつり上げを目的としたトランプ政権の一連の政策がある。米国際貿易局によると、2024年に外国人観光客が米国内で旅行・観光関連サービスに費やした総額は2540億ドル(約37兆円)だった。
米国は来年、カナダ・メキシコと共同でサッカーのワールドカップを主催する予定だが、今回の措置は外国人の観客動員に影響を及ぼす可能性がある。国際サッカー連盟(FIFA)は同大会が米国に約3050億ドル(約45兆円)の経済効果をもたらすと予測しているが、これは多数の外国人が観戦のために米国を訪れるという前提に基づいたものだ。複数の開催都市の観光当局関係者がフォーブスに語ったところによると、FIFAは観客の半数が国外からの来訪者になると見込んでいる。



