Forbes JAPAN本誌で連載中の『美酒のある風景』。今回は8月号(6月25日発売)より、「フレンチ・ブルーム ラ・キュヴェ・ヴィンテージ2022」。ワイン本来の香りを保ちながら脱アルコールをすることに成功している1本だ。
ひと昔前まで酒は上戸か下戸、すなわち「飲める」か「飲めない」かの二択であったが、当節はそこに「飲まない」が加わった。2019年ごろに欧米で生まれた “ソバーキュリアス”というライフスタイルはパンデミックを機に一気に拡大。ノンアルコール・ペアリングやモクテルが一般的になり、飲酒をめぐる選択肢のバリエーションは飛躍的に増えた。同時にオルタナティブ・ワインと呼ばれるジャンルの飲み物も登場。Alternative、つまり代替と訳されるこの飲料は、その多くがブドウジュースと大差ないのだが、なかにはワインと遜色ない、否、ワイン以上と言えるクオリティのものも存在している。
そのひとつにして、傑出しているのが「フレンチ・ブルーム」。フランスの名門シャンパーニュ・メゾンの御曹司と、レストランガイドで知られる「ミシュラン」に勤めていた美食家の妻、そしてスーパーモデルの友人という3人が、酒を飲まない日でも社交の場を楽しめるようにと開発したノンアルコール・スパークリングワインのブランドだ。なかでも「ラ・キュヴェ」は仏ラングドック地方リムーで有機栽培されたシャルドネをフレンチオークの新樽で8カ月熟成させたベースワインを、真空状態で低温蒸留すること3回。1回目の蒸留でアルコール度数を約14%から3%に、2回目で3%から0.5%に、最終的には0.0%に下げるという丁寧なプロセスにより、ワイン本来の香りを保ちながら脱アルコールをすることに成功している。
「リンゴを思わせるふくよかで熟成感のある香りと、長い余韻が印象的です。うまみの強い発酵食品にもしっかりと寄り添ってくれそうですね」と語るのは「百薬 by 徳山鮓」(東京・銀座)の多田将人店長。ここ数年で顕著に増加しているノンアル需要に応えてくれる一本になりそうだと、大きな期待を寄せていた。
不思議なのはその深みのある香りと味わいに、グラスを重ねるうち、ほんのりと酔ったように感じることだ。“酔う”とは必ずしもアルコールのいかんによるものではなく、美食や雰囲気、そして人との会話に気分が高揚することなのかもしれない。体調や気分によってアルコールを摂りたくない・摂れない日は誰にでもあろうが、こんなノンアルコール・スパークリングワインがあれば友人と会食したり、社交の場に出席したりすることも楽しみになるだろう。これはもうオルタナティブではない、まぎれもないワインだと言える。
フレンチ・ブルーム ラ・キュヴェ・ヴィンテージ2022

容量|750ml
度数|0.0% セパージュ シャルドネ100%
価格|18144円(希望小売価格)
問い合わせ|アオセフランス https://www.aocfrance.jp/frenchbloom



