オンラインビジネスを成功に導くための秘訣は、長い間ごくシンプルなものだった。それは、自力でグーグルの検索順位を上げるか、グーグルに広告費を支払ってトラフィックを獲得するかのどちらかだった。
しかし、2024年5月にグーグルが導入を開始した「AIによる概要(AI Overviews)」は、検索ページの最上部に、リンクを表示する代わりにその検索に対する回答を提示することで、サイトへのクリックを大幅に減らしている。
知識集約型ビジネスのクリック数が急減
その影響を真っ先に受けたのは、コンサルティング会社、パブリッシャー、eラーニングプラットフォームなど知識集約型ビジネスを運営する企業だ。その一方、小規模なレストラン、配管業者、建築会社といった地域密着型ビジネスは、ほとんど影響を感じていない。このような業界の顧客は、地元の店や業者を探しているからだ。
しかし、中小企業を顧客に持つSEO(検索エンジン最適化)のコンサルティング企業は、彼らに残された時間もそう長くはないと警告する。
「失われるクリック」の重要性と見過ごされがちな影響
2006年にSEOコンサルティング企業Local SEO Guideを創業したベテラン、アンドリュー・ショットランドは、「教育系のコンテンツ」を用いて見込み客を自社サイトに呼び込んできた中小企業への影響がすでに出ていると語る。
彼はその一例として、かつて「アラバマ州で車内セックスは合法か?」といった検索から多くのトラフィックを得ていた、同社顧客の法律事務所を挙げている。現在この質問をグーグルで行うと、アラバマ州の刑法や公然わいせつ罪についての「AIによる概要」が表示され、出典としては、法律専門サイトFindLawやJustia Lawのリンクが示されるかもしれない。
この概要は、FindLawやJustiaのサイトに、さほど多くのトラフィックをもたらすわけではない。一方、先の法律事務所のクリック数は、検索結果には依然として表示されているにもかかわらず減少している。
「失われたクリック」は重要だ。なぜならクリックがなければ、企業は潜在顧客と直接つながる機会を失うからだ。サイトへの訪問がなければ、自社のストーリーを語り、信頼を築き、売り込む機会を失うことになる。しかも、その減少は気づきにくい。多くの企業はインプレッション数や検索順位を追跡しているが、この2つはむしろ横ばいか改善しているように見えることがあるからだ。
インプレッション数は増加しても、クリックは減少
実際、「AIによる概要」は、検索結果にサイトが表示された回数を意味する「インプレッション」を押し上げることがある。AIが生成した要約やスニペットにサイトのリンクが含まれれば、ユーザーに表示されたとカウントされるためだ。
たとえユーザーがそのサイトを訪問しなくても、「AIによる概要」に情報が表示されればインプレッションは加算される。しかし、実際のサイトへの訪問であるクリックは減少する。なぜならユーザーはAIの要約で必要な情報を得てしまい、クリックする必要がなくなるからだ。つまり、サイトが以前の順位を保っていても、肝心のクリックが減ってしまうのだ。



