データが示す「ゼロクリック検索」の拡大
調査会社Seer Interactiveの報告によると、「AIによる概要」が表示された場合、オーガニックのクリック率(CTR)は70%減少する。ピュー研究所の調査でも、概要が表示された検索結果からは、従来のリンクのクリック率が半減し、概要の中のリンクを実際にクリックする人はわずか1%にとどまっていた。
コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーは、この状況について「『ゼロクリック検索』がマーケティングを再定義する」と表現している。同社によれば、調査対象となった消費者の80%が、自分の検索行動のうち40%以上のケースで、リンクをクリックしていない。「AIによる概要」を見るだけで完結し、満足しているという。
小売業界にとって、オンライン検索の重要性は計り知れない。調査会社フォレスターによると、2022年の小売取引全体の59%が「デジタル要素を含む」と推計されていた。これはつまり、全体の6割近くがオンラインでの販売か、顧客が実店舗での購入前にオンラインで商品や企業を調べていたことを意味する。こうした取引は総額2兆7000億ドル(約397兆円。1ドル=147円換算)にも上り、2027年には3兆8000億ドル(約559兆円)に拡大すると予測されている。
専門家が提唱する、逆説的な生存戦略
これまでのところ、グーグルの「AIによる概要」による最大の打撃を受けているのはニュースや情報系のサイトだ。SEO企業のSteady Demandを運営するベン・フィッシャーも、ショットランドの見方に同意し、「ほとんどの中小企業は、まだ大きな影響を受けていない」と語る。この2社によれば、配管工、地域のレストラン、弁護士などの顧客は依然として検索結果に表示され、見込み客を獲得できている。ただし、先に挙げた「〇〇は合法ですか?」のような、教育系コンテンツに大きく依存してきた法律事務所のサイトでは、すでにクリック数が減少し始めているケースもあるという。
しかし、フィッシャーとショットランドは、顧客に対して今すぐ行動を起こすよう促してもいる。そして意外なアドバイスもしている。「AIによる概要」は、直接クリックにつながらないものの、そこに自社が表示されることが重要だと述べている。そして、そのためには「サイト上の教育系コンテンツを強化する必要がある」と指摘している。
クリック数が減っても、質の高いクリックなら価値がある
ショットランドは、この一見矛盾するように見える状況をこう説明する。調査によれば、人々は「AIによる概要」をますます信頼するようになっており、それが最終的な事業者選びに影響を与える可能性があるという。つまり、ここに表示された場合は、社会心理学の用語でいう「ハロー効果(特定の能力が高いと、他の能力も高いと評価される現象)」が起こると考えられる。
企業サイトがグーグルの「AIによる概要」に含まれた場合のクリック数は、かつての検索結果のトップに表示された場合と比べると見劣りするかもしれない。しかし、概要を読んだうえでリンクをクリックする人は、より真剣に関心を持っていたり、購買に近い段階にあったりする可能性が高い。特に、「AIによる概要」に掲載されたことで「信頼できる情報源」として認められた場合はなおさらだ。
ただし、ここでの課題は、リード(見込み客)の質を数値化するのが難しい点にある。一方、クリック数は簡単に数えられる。ショットランドも認めるように、「クリック数が減っても質の高いクリックなら価値がある」という考えを人々に理解させるのは容易ではない。


