アジア

2025.08.05 10:00

タイとカンボジアはどのように戦ったのか 砲兵戦・空爆・ドローン

オーストラリアでの多国間演習「ピッチ・ブラック」で飛行するタイ空軍のヤース39Dグリペン戦闘機。2024年7月18日、豪ダーウィン(DLeng / Shutterstock.com)

戦闘機の兵装面では、タイ空軍はフランス製のATLIS-IIレーザー・光学照準ポッドを取得し、それをペイブウェイII(簡単に言えば500ポンドもしくは2000ポンドの通常爆弾を精密誘導弾薬に転換する改修キット)と組み合わせて運用していることが知られている。また、GPS(全地球測位システム)誘導で射程80km以上(発射高度による)の韓国製KGGB滑空爆弾や、赤外線画像誘導で射程がより短い米国製AGM-65マーベリック(D型とG型)空対地ミサイルも配備している。

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こうした誘導弾薬が重要なのは、たんに攻撃の精度と有効性が高まるだけでなく、搭載機は敵の短距離防空システムの射程から十分離れたスタンドオフ攻撃が可能になるという点にある。たとえば、カンボジア軍が保有する中国製の携行式ミサイルや旧ソ連製の対空機関砲などがそれにあたる。

カンボジア軍は戦闘機を保有していない一方、カンボジア陸軍が2023年に中国製のKS-1C中距離地対空ミサイル(中国軍での制式名称は紅旗-12、HQ-12)システムを複数基入手しており、H-200フェーズドアレイレーダー(PAR)と統合運用している。国境地帯への展開はリスクを伴うものの、最大射程70km、最大到達高度2万6000mとされるKS-1Cはタイ空軍機を脅かす可能性がある。

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もっとも、KS-1Cはタイ軍も中国から輸入しているので、この防空システムに対する有効な対抗策も研究・実験しているかもしれない。さらに、タイ空軍はスウェーデン製のエリアイPARをサーブ340に搭載した早期警戒管制機(AWACS)も運用しており、これが戦闘機の防空脅威回避に寄与した可能性もある。F-16戦闘機が1機撃墜されたという噂も流れたが、それを裏づける証拠は今のところない。

タイ空軍の古い米国製F-5軽戦闘機(2031年退役予定)やドイツ・フランス製のアルファジェット攻撃機・練習機は使用されなかったとみられる。タイ政府は現有のグリペンよりも高性能な新型のグリペン-E/Fを1個飛行隊分取得する方針だが、スウェーデン政府は新たな売却に先立ち、国際法に関する自国の見解に照らし、タイによる今回のグリペンの実戦使用が問題なかったか評価する可能性がある。

ドローンの使用

ロシアが2022年に始めたウクライナ全面侵攻では、中国で大量に生産されているような小型・短距離の民生品級ドローンが、偵察システムとして驚くほど有効なばかりか、擲弾(てきだん)を投下したり、対戦車弾頭などを抱えて体当たりしたりすることで、非常に安価な誘導兵器にたやすく転用できることが明らかになった。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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