アジア

2025.08.05 10:00

タイとカンボジアはどのように戦ったのか 砲兵戦・空爆・ドローン

オーストラリアでの多国間演習「ピッチ・ブラック」で飛行するタイ空軍のヤース39Dグリペン戦闘機。2024年7月18日、豪ダーウィン(DLeng / Shutterstock.com)

多連装ロケットシステム(MRLS)はトラックに搭載されることが多く、大量のロケット弾を一斉発射し、広い範囲に通常弾(HE弾)を浴びせることができる。精度には欠けるものの、規模と烈度は凄まじい。

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1960年代に旧ソ連で開発された122mmロケット砲であるグラートはさまざまなトラック式発射装置に対応しており、世界で最も広く採用されているMRLSと言ってもよいかもしれない。カンボジア軍は、旧ソ連製のオリジナルのBM-21のほか、8輪トラックに搭載される旧チェコスロバキア版のRM-70、中国版のPHL-81(81式、ベトナムで鹵獲されたBM-21をリバースエンジニアリングして開発)、射撃統制システムを改良したその後継のPHL-90B(90B式)を運用している。タイ軍も中国製のSR-4(81式の改良型である11式=PHL-11の輸出仕様)を配備している。

これらのロケット砲システムはすべて、ロケット弾40発を一斉射撃できる発射機を備えており、RM-70やPHL-90Bは再装填用の弾薬も積んでいる。グラート用の標準的なロケット弾の最大射程は約20kmだが、射程延伸型ロケット弾では最大で2倍以上遠くまで届く。

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グラートよりも口径の大きいロケット砲は概して射程もはるかに長く、遠方の軍事基地や人口密集地を攻撃できる。もっとも、こうした縦深攻撃は、より広範で破壊的な紛争を招きかねない。

大口径・長射程のMRLSとして、カンボジア軍は中国製のPHL-03(03式)を6両配備している。トラックに12連装発射機を搭載したもので、300mmのロケット弾は射程が130kmかそこらある。一方のタイ軍はDTI-1とDTI-1G(それぞれ中国の自走多連装ロケット砲であるWS-1B、WS-32のライセンス生産品)を運用しており、いずれも302mmのロケット弾4発を発射する。とくにDTI-1Gは中国の全地球測位衛星システム(GNSS)「北斗」を利用して衛星誘導ロケット弾を140km先に撃ち込むことができ、発射数は少ないとはいえ、格段に精度の高い砲撃が可能である。

カンボジア軍のPHL-03も技術仕様としては中国製の火竜-140(ファイアドラゴン-140)誘導弾に対応しているものの、カンボジアがこの弾薬を入手したことは確認されていない。

今回の紛争を通じて、タイ軍、カンボジア軍いずれも係争地以外への縦深攻撃を試みた形跡はない。ただしタイのメディアは、カンボジア軍のPHL-03を空爆で撃破したと主張している。

タイ軍とカンボジア軍は榴弾砲も大規模に使用した。タイ軍は105mmと155mmの牽引式榴弾砲をさまざまな国から数百門取得しているほか、米国で開発されたM109自走榴弾砲(装軌式)、現代的なフランス製カエサル自走榴弾砲(装輪式)やイスラエル製ATOMS-2000自走榴弾砲(同)も配備している。いずれも155mm口径で、より高度な誘導能力を誇る。

カンボジア軍は122mm、130mm、152mmの野砲や榴弾砲をはじめ、旧ソ連製や中国製の旧式の大砲を中心にさまざまな砲システムを保有している。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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