アジア

2025.08.05 10:00

タイとカンボジアはどのように戦ったのか 砲兵戦・空爆・ドローン

オーストラリアでの多国間演習「ピッチ・ブラック」で飛行するタイ空軍のヤース39Dグリペン戦闘機。2024年7月18日、豪ダーウィン(DLeng / Shutterstock.com)

オーストラリアでの多国間演習「ピッチ・ブラック」で飛行するタイ空軍のヤース39Dグリペン戦闘機。2024年7月18日、豪ダーウィン(DLeng / Shutterstock.com)

カンボジアとタイの間で長年くすぶってきた国境紛争が7月24日、大規模な軍事衝突に発展した。両国の軍隊は、国境地帯にある文化的に重要な寺院群、具体的に言えば東はプレアビヒア、西はタームエントム、タークワイ各寺院とその周辺地域の支配を争った。

2011年に起こった以前の軍事衝突と同様に、地上では小銃や支援火器で武装した歩兵が係争地を奪い合ったり、防御にあたったりした。係争地に対してはロケット砲や榴弾砲による砲撃も加えられた(クラスター弾も使用された)。一方で今回、両国の交戦で初めて、精密誘導兵器を搭載したジェット戦闘機や、ドローン(無人機)も戦闘に加わった。

5日にわたる戦闘の末、両国は7月28日に即時停戦で合意し、29日午前0時に発効した。最新の集計によれば双方で計40人以上が死亡し、うちうちかなりを民間人の犠牲者が占めている。さらに、数十万人が自宅からの退避を余儀なくされた。

カンボジア王国軍とタイ王国軍による今回の交戦では、東側製と西側製の新旧の兵器が使用された。カンボジア軍は現在、中国の支援を受けており(以前はベトナムの支援も受けていた)、タイ軍は米国、イスラエル、ウクライナ、フランス、スウェーデンなどから兵器を取得してきたほか、近年は兵器調達と軍事演習の両面でやはり中国との結びつきを強めている。

原注:軍事衝突(とりわけ最近もしくは継続中のもの)における個々の戦闘について確認を行うのは難しい。往々にして、混乱して情報が錯綜しているほか、双方とも自軍の戦績については楽観性バイアスがはたらき、人々の認識に影響を与えることを狙ったプロパガンダも流すからである。この記事では、紛争当事国であるカンボジアとタイ双方の主張と、信頼性の高い画像を検討している。

砲兵戦

タイ軍とカンボジア軍はともに大規模で多様な砲兵戦力を有しており、とくにカンボジアはロケット砲にリソースを投じている。7月の激しい軍事衝突に先立ち、両軍は数カ月にわたり、係争地の支配をめぐっておおむね非暴力の対峙を続けていた。

タイ側の説明によれば、7月24日の朝、タームエントム寺院付近にカンボジア軍のBM-21グラート自走多連装ロケット砲による砲撃があり、タイの民間人11人と軍人1人が死亡した。これが大規模な戦闘と報復攻撃につながった。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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