島々の生態系は、地球上で最も繊細なものに含まれる。侵略的外来種の移入、頂点捕食者の絶滅、あるいは気候のわずかな変化や異常気象でさえ、島の生態系を崩壊に導きかねない。
こうした問題を解決するのは極めて難しいが、不可能ではない。それを裏付ける証拠が、メキシコのソコロ島にある。ここでは、科学者たちが政府職員や軍と協力し、人間活動が引き起こした島へのダメージのかなりの部分を回復させた。
ソコロ島の生態系修復
ソコロ島は、メキシコ西岸から約600km沖合にある太平洋の孤島だ。スペイン人航海者が1533年に発見したものの、1957年にメキシコ海軍が基地を建設するまで、何世紀にもわたってほぼ無人のままだった。この島は火山性で、急峻な地形と乾燥した亜熱帯気候を備え、地球上でここ以外のどこにもない独自の動植物相を育んでいた。
ソコロ島は、メキシコのレビジャヒヘド国立公園の一部であり、面積は約130平方km。メキシコの島々のなかで固有種の割合が最も高く、島に分布する117種の維管束植物(植物の内からコケ類や藻類を除いた群)のうち、26%が固有種だ。また、固有の地上性鳥類8種や、ソコロブルーリザードと呼ばれるトカゲも分布する。
しかし、この驚くべき生物多様性は、ヒトが持ち込んだ侵略的外来種の哺乳類により、崩壊寸前に陥った。とくに甚大な被害をもたらしたのは、ヒツジとネコだった。
ヒツジは1世紀以上前に持ち込まれ、野放図な放牧が行われた結果、島の植生のおよそ3分の1が破壊され、深刻な土壌侵食と生息地の劣化が起こった。一方、ネコはソコロブルーリザードをさかんに捕食し、在来鳥類の個体数も激減させた。ソコロナゲキバトとソコロサボテンフクロウは、捕食と生息地の喪失により野生絶滅に陥り、オオセグロミズナギドリなどその他の種も絶滅寸前に追いやられた。
こうした危機的状況が認識されたため、2009年、ヒツジとネコの大規模な根絶作戦が開始された。ヘリコプターと経験豊富なスナイパーが投入され、無線テレメトリー首輪を装着した「ユダのヒツジ(群れの位置を特定するために放たれたヒツジ)」を利用するなど、最先端の追跡手法が取られた。こうして、2012年までに1762頭の野生化したヒツジが駆除された。
駆除の手法のなかで最も効果的だったのは、ヘリコプターからの狙撃だった。わずか2日間(飛行時間35時間)で、スナイパーは1257頭のヒツジを島から排除したのだ。
続いてネコの根絶作戦が2011年にスタートし、トラバサミと致死的トラップ、テレメトリーシステムが用いられた。2016年までに500匹以上のネコが島から排除され、根絶に向けた個体数の減少が続いている。
侵略的外来種の個体群が消滅したことで、植生は急速かつ劇的に回復し、土壌の質と植物の多様性にも顕著な改善が見られた。
目をみはるような成果だ。ソコロ島では、在来種の鳥とトカゲの個体数が回復し、植生被覆が拡大し、生態系が安定化しつつある。ノネコがほぼ一掃されたことで、島の回復は新たなフェーズに入った。著しく劣化した島の生態系であっても、科学研究と継続的な努力、そして十分なリソースがうまく噛み合えば、回復が可能であることが裏付けられたのだ。



