キャリア・教育

2025.08.19 16:30

女子中高生の理系選択を増やしたい、山田進太郎D&I財団の挑戦

2025年5月15日、MIXI社を訪れた東洋英和女学院中学部3年生の生徒たちの模様。学校単位で参加できる「Girls Meet STEM for School」は今回、MIXI社だけでなく、アサヒグループホールディングス、STORES、日本アイ・ビー・エム、NECでも行われた。同校のキャリア学習および探究学習の一環として実施され、3年生全員(202人)が参加した。今後、10校以上での開催を予定している。

2025年5月15日、MIXI社を訪れた東洋英和女学院中学部3年生の生徒たちの模様。学校単位で参加できる「Girls Meet STEM for School」は今回、MIXI社だけでなく、アサヒグループホールディングス、STORES、日本アイ・ビー・エム、NECでも行われた。同校のキャリア学習および探究学習の一環として実施され、3年生全員(202人)が参加した。今後、10校以上での開催を予定している。

2025年6月25日発売のForbes JAPAN8月号は「10代と問う『生きる』『働く』『学ぶ』」特集。創刊以来、初めて10代に向けた特集を企画した。背景にあるのは、10代をエンパワーメントしたいという思いと、次世代を担う10代とともに「未来社会」について問い直していくことの重要性だ。「トランプ2.0」時代へと移行した歴史的転換点でもある今、「私たちはどう生きるのか」「どのような経済社会をつくっていくのか」という問いについて、10代と新連結し、対話・議論しながら、「新しいビジョン」を立ち上げていければと考えている。

テクノロジー領域のジェンダーギャップという社会課題に対して、10代を対象に「選択肢が広がる機会」を届けるフィランソロピーとは。


「実際に働いている女性エンジニアの皆様の声を聞けて、すごく魅力のある仕事だとわかり、身近な職業に感じることができました。この一日ですごく自分の将来の幅が広がりました」

「理系でないとエンジニアになれないと思っていましたが、話をしてくれた方が文系で驚きました」

2025年5月15日、MIXI社を訪れた東洋英和女学院中学部3年生の生徒たちはそう話す。公益財団法人山田進太郎D&I財団が行う、中高生女子を対象としたSTEM(理系)領域の体験プログラム「Girls Meet STEM」。なかでも、今回初開催の、学校単位で参加できる「Girls Meet STEM for School」を体験した生徒たちの口からは、理系選択に対する好意的な言葉が並んだ。

同財団は24年6月から、中高生女子がSTEM領域のオフィスツアーやキャンパスツアーに参加し、現場で活躍する女性たちとの交流を通じて、進路選択の幅を広げることを目的にした「Girls Meet STEM」を開始。これまでに全国でのべ2000人強が参加した。また、今年から「Girls Meet STEM for School」も開始し、東洋英和女学院中学部をはじめ、10校以上での開催を計画している。

「中学校、高校からとても興味をもっていただき、クラス単位、学年単位での取り組みも実験的に行っています。授業の一環としての取り組みかもしれないですが、参加機会があることで『興味がなかったけど、面白いかも』となる可能性も大きいのではないか、と。だから、個人からの『アプライ(申し込む)』以外の方法でもやっていきたい」

山田進太郎|公益財団法人山田進太郎D&I財団代表理事
山田進太郎|公益財団法人山田進太郎D&I財団代表理事

そう話すのは、山田進太郎D&I財団の代表理事であり、フリマアプリのメルカリ代表執行役CEOでもある山田進太郎だ。山田はフィランソロピーの一環として、21年7月に同財団を設立。30億円を財団に寄付する計画のもとで、D&I推進のための取り組みを行っている。まずはSTEM分野におけるジェンダーギャップという社会課題にフォーカス。財団設立当時、日本における大学入学者STEM女性比率17.90%とOECD(経済協力開発機構)のなかでも最低だった数値を、35年にOECD平均である同比率28%まで上げることを目標にしている。

同財団では、中高生の文理選択で理系を選択する女子比率が低いことに着目し、理系に関心をもつ人数を増やすことが根本的な課題解決につながるとし、設立時から理系選択を応援する「STEM女子奨学助成金」事業を展開。奨学助成金は累計1,700人に総額約2億2,000万円を支給。25年度も全国約500人の生徒を対象に行う。能力主義ではなく抽選制であること、成績証明不要で面接なし、文理選択で迷っているうちに応募できるなど山田の哲学が入っている点が特徴だ。

「奨学助成金事業から始めて手探りで財団を運営していくなかで、生き生きと活躍する社会人や大学生の生の声を聞く機会が『こうなりたい』というロールモデルとの出会いにもなり、中高生女子たちの大きなきっかけになっていると気づきました。仕組みとして形にできないかと始めたのが『Girls Meet STEM』です」(山田)

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文=山本智之 写真=平岩 亨

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