同ツアーを開始した24年度には16社、24大学が参画。本田技研工業、SOMPOホールディングス、三菱UFJフィナンシャル・グループ、東日本旅客鉄道、サントリーホールディングスなどの大企業が並んだ。参加した中高生女子へのアンケート調査を見ると、「将来なりたい進学先や職業のイメージが湧いた」(76%)、「将来こうなりたいと思える人を見つけた」(72%)と、進路やキャリア意識が高まったことがわかる。
25年度には参画企業数が約7倍へと急増し、112社、32大学、8高専が参画するなどさらに拡大している。花王やトヨタ自動車、楽天グループ、ロッテをはじめ、関西電力、積水ハウスなど地方を代表する企業も参画し、全国展開を予定している。さらに、東京都をはじめとした5自治体とも連携していく。
「多くの企業、大学、自治体と連携できるのは、非営利組織ならではですね。『Girls Meet STEM』は企業、参加者ともに満足度が高く、社会から求められているのを感じました。今年は多様なパートナーと連携し、1万人参加とさらにインパクトを出して、28年には全国開催、7万人参加の規模を目指しています。今後も引き続き、チャレンジを続けていきたいですね」
テクノロジー領域のジェンダーギャップについては、現状多くの課題があるが、産官学が社会課題として共通認識し、その改善に向けた動きは多層で、かつ、加速している。山田の取り組みはその象徴的な動きと言える。日本で機運が高まっている今、STEM分野への大学入学者に占める女性比率は24年度20.65%にまで上昇した。そんななか、山田は中高生女子を含めた10代へのメッセージとして次のように語る。
「私たちは必ずしも理系を選択してほしいと思っているわけではありません。好きなことをやってほしいんです。自分の好きなことに取り組んでいる人が増えることは、みんなが自分の好きなこと、やりたいことを選択しやすい社会につながると信じています。『難しそうだから』『誰かに言われたから』で決めるのではなく、さまざまな選択肢を知るなかで、自分が『これだ』と思うものを見つけてほしい。好奇心に忠実に、自分が『面白そう』と思ったらすぐやってみる。いろいろなことをやってみる、その先に好きなことが見えてくるというのが大切なのではないかと思います」
山田進太郎◎D&I財団が2024年から開始した、高専や大学、企業・研究機関と協力して実施する、中高生女子向けのSTEM(理系)領域の体験プログラム。高専や大学のキャンパス・研究室や企業のオフィスを訪問し、STEM現場を体験するとともに、大学生や大学院生、社会人女性との交流を通じて、進学やキャリアへの可能性を広げることを目指している。25年は112社、32大学、8高専が参画。25年からは学校単位で参加できる「Girls Meet STEM for School」も始動。
山田進太郎D&I財団◎D&I推進を通じて、誰もが能力を発揮できる社会を目指し、2021年7月にメルカリCEO山田進太郎によって設立された公益財団法人。特にSTEM(理系)のジェンダーギャップに注目し、中高生女子のSTEM分野への進学やキャリア選択を支援する奨学助成金事業を展開。24年「Girls MeetSTEM」事業を開始し、オフィスツアーやキャンパス・研究室ツアーを通じて、STEM領域で活躍するロールモデルとの交流機会を提供している。


