キャリア・教育

2025.08.18 15:30

アントレプレナーシップ教育にも「課題解決」が必要だ

アントレプレナーシップ教育に今、大きな期待と注目が集まっている。一方、「認識のズレ」「解釈の違い」から一過性のトレンドに終わるとの声も出始めている。


「最悪のシナリオは『アントレプレナーシップ(起業家精神)教育は意味がない』と忘れ去られていくこと。絶対に避けたいシナリオだが、現状、そうなってもおかしくない」。教育事業を展開する、ある起業家の言葉だ。

高等教育機関を中心にアントレプレナーシップ教育プログラムの導入が加速している。背景にあるのが、自ら課題を発見し、新たな価値を創造できる人材ニーズの高まりだ。少子高齢化やグローバル競争の激化が進むなか、持続的な経済成長のためには新たな挑戦やイノベーションが不可欠であり、アントレプレナーシップはその原動力になると期待されている。

だが、活況の裏で「このままでは一過性のトレンドに終わるのではないか」と危惧する声も聞かれる。なぜなのか。教育関係者や学生、アクセラレーターなど、さまざまなプレイヤーに話を聞くなかで見えた最大の要因は「認識のズレ」、つまりアントレプレナーシップという言葉の解釈の違いにありそうだ。

経済学者ピーター・ドラッカーは、アントレプレナーシップとは「すでに行っていることをより上手に行うことよりも、まったく新しいことを行うことに価値を見出すこと」であり、企業や行政、NPO、教育機関など、さまざまな場所で必要とされる普遍的な能力だと説いた。2010年代からアントレプレナーシップ教育を推進している文部科学省も「アントレプレナーシップとは新たな価値を生み出す精神であり、必ずしも起業家の育成だけに資するものではない」(文部科学省科学技術・学術政策局 産業連携・地域振興課 産業連携推進室の金澤奈央)と説明する。

つまり、アントレプレナーシップとは個人のキャリアの自律性や創造性を高める素地であり、日本社会の「現状維持病」を打破するためのマインドセットなのだ。しかし現場に目を向けると、共通認識をもてないままプログラムだけが先行しているケースが散見される。「アントレプレナーシップって起業家精神だから、起業家に必要なスキルを磨くということですよね」

大学生に「アントレプレナーシップとはどういうものだと思いますか?」と聞くと、このような答えが返ってくることが多い。彼らは「起業家になる気はないから、自分には関係ない」と考える。他方、教員からは「大学は起業家を育てる場所ではない」との声も聞かれる。アントレプレナーシップ教育をトレンドで終わらせないためには、日本社会の現状と、アントレプレナーシップ教育の意義や目的を現場レベルに浸透させることが不可欠だ。

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文=瀬戸久美子 イラストレーション=ポン

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